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横浜事変-the mixing black&white-
田村要は自分の結論を汚れた世界に導き出した
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を引きながら後ろへと倒れる彼が映った。要が反射的に銃を相手の顔に向けたとき、もう一発乾いた音が木霊する。
今度はもう一方の仲間へ吸い込まれていった。腹部を押さえながら前のめりに倒れて呻く彼を見て、要は舌打ちする。
「……一気に片付けて追い込むって、性格悪いな」
「俺が喋ってる途中に撃ってきた奴が言う言葉かよ。つかよ、先手取るってのはこの世界での基本。常套手段だぜ?」
「普段は街の裏でコソコソしてるから、それしか出来ないんだろ。逆に」
「言ってくれるねえ。じゃあお前は表で人殺しするのかい?」
「まさか。でも、横浜を牛耳ってるつもりのアンタらは、俺達が好き勝手するのを嫌がるだろ?仮に俺らが街中で暴れても、ちゃんとポリの仲間呼ぶぐらいにさ」
「だろうな。まあ、そんな事する奴は俺達が消すまでだがな」
皮肉に皮肉で返しながら、互いを言葉で翻弄し合う。だが次の瞬間、要は左腕の裾から小型のナイフを取り出し、流れ作業でそれを敵の顔面に投げつける。
ダーツの矢さながらの勢いと凶器さが顔に向けて放たれるが、無精髭はそれを紙一重で躱す。しかしそれだけでは終わらない。
要は相手が顔をのけ反らせている隙にもう一本のバタフライナイフを右腕の裾から抜き出し、腹へ一直線に向かわせた。敵はその動きに気付き、急いで身体を捻らせる。
そして腹部に凶刃が吸い込まれると思われたそのとき――敵は自身の手でもってナイフを防御した。手の平は薄いとはいえ、ナイフの威力を弱めるだけの力は果たしてくれる。
それでもナイフが恐ろしい刃物である事には変わりない。殺し屋の右手は見事ナイフによって突き抜けており、手の甲から切っ先が覗いていた。
「……なに?」
相手の予想外だった動きに、さすがの要も訝しげな顔をして敵の顔を見る。ガクリと顔をこちらに向けた男は、少し息を荒くしながら呟いた。
「手なら……ちょっと治療すりゃ治る。腹は、死ぬかもしれねえし」
「……」
――これが、殺し屋統括情報局。
――あの金髪といい、コイツといい……。
「……そういうの、良いな」
「あ?」
今度は敵が目に嫌疑の色を浮かべてこちらを見ている。それを無表情で受け流して、彼は思いきりナイフを手から引き抜いた。
「っが……!」
敵の呻きは黙殺して、要は背を向けて歩き出した。今は気分が良い。あの男との戦いは次回に持ち越そう。要はフッと珍しく素の笑みを浮かべながらその場を離れた。
のだが。
後ろから息の荒い声が聞こえてきた。
「……で、お前らは何がしたい?」
敵の発した言葉の意味が分からぬとでも言うように、要は相手の顔を見て言った。
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