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横浜事変-the mixing black&white-
田村要は自分の結論を汚れた世界に導き出した
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したあのバンの餌食になっていたかもしれない。そう思うと苛立ちでは無く純粋に安堵が湧いてくる。
――俺はまだちゃんと戦っていないからな。
――あの金髪野郎の首狩っただけで納得出来るかよ。
***
田村要という人間は人を殺す事に何かしら魅力を見い出すような狂気性の持ち主ではない。とはいえ、刺激的なものが嫌いなわけでもない。
どうしてこの世界に身を浸しているのか。いつ頃から殺し屋をやっているのか。その理由を彼は覚えていない。気が付いたらここにいた。そんな感覚だった。
しかし自分が小学生の頃から周りとは違う事だけは分かっていた。何事もそつなくこなし、誰よりもクールな子供。それ故に彼の周りに人が集まるような事は無かった。
彼は最初、友達が欲しかった。そのためにいろいろな事に挑戦し、それらを全てクリアしてきた。見返りを求めたわけではない。ただ、頑張れば友達が増える。そう考えただけなのだ。
しかし彼の打算とは裏腹に、クラスメイトは彼を敬遠した。表向きでは笑みを見せていながら、裏では非難していた。それを知った要は、ここで初めて物事に対して『諦め』を覚えた。
そしてそれが、要の倫理を大きく捻じ曲げた。
人との結びつきは、どこかで途切れる。次に出会った時にはもう希薄な関係へと一転している。いつまでも仲が良いというのは、それこそ互いに仲を認め合っているからなのだろう。その人物にとって欠かせない存在となっている証拠だ。とても素晴らしい事なのかもしれない。
だが、やはり彼にとって人間関係というのは特定の期間だけ発生する中途半端で偽りのものだった。それを彼は身をもって経験した。故に、彼はこう解釈したのだ。
中途半端な生き方をする人間と一緒なのは嫌だ。
たった、それだけ。人間の繋がりから得られた理論は、あまりにも単純であまりにも悲しいものだった。
秀才で全てを完璧にこなし、矜持の強い彼だからこその結論。けれどそこには、自分が輪の中に入れなかった事に対する負け惜しみのようなものが含まれている事に、本人は気付いていない。
今、要が過ごす血生臭い世界は、自分にとって安心出来る居場所だった。それだけ聞けばやはり狂気に満ち溢れている。だがそれは彼が提唱する人間関係があるからこその結論だった。
この殺伐とした場所でなら、自分は自分の力を十二分に引き出せる。何故なら、自分よりも強い人間がいて、自分を認めてくれる人間がいるから。そしてその関係は自分が死ぬまで続くから。
田村要は殺人が好きなわけではない。ただ居場所と関係が欲しいだけなのだ。
秀才過ぎて歪んだ少年は、人殺しが常々である泥水のような世界で今日も安寧を実感しながら人を殺す。
誰か個人のためではなく、
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