第6話 回転木馬ノ永イ夢想(後編)
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さんの偽物が送りこんだ、弁護士だとかいう男が、声を聞きつけて家に上がりこみ、あなたを連れ去った。あの男はあなたを病院に連れていき、そのあと私をさも病人であるように吹聴して、この病院に閉じこめた。私が潔白を証明して、あなたとまた共に暮らすにはどうすればいいの。
※
眠りの夢の明かり。
六畳間の寝室いっぱいを、メリーゴーラウンドが占拠している。射しこむ西日が白い木馬と真鍮の棒を赤く染めて、あさがおは一台の木馬にまたがり、浮き沈みしながら回っている。
「あさがおー」
さー。さー。
襖の向こうから母親が呼ぶ。
「あさがー。あさがおー」
さー。さー。
「お母さん」
応じる。木馬から下りずに。私はここだよ。心配しないで。
「あさがおー」
その声はますます悲しく、上擦って震える。
「ここを開けてぇー」
さー。
ざー。
「開けてぇー」
「ごめんねぇ」
あさがおは泣いている。
「それは駄目なのぉ」
「開けてぇー」
ざぁー。
襖に両手をつけたまま、床にしゃがみこむ気配。
真鍮の持ち手に、黒い陰が揺れる。
窓の向こう、夕日を背負いながら、大きなトンビが歩いてくる。
インバネスコートをぴたりと身に巻きつけ、山高帽をかぶり、そのつばの下には一対の優しい大きな目。
鉤爪状の黒いくちばしに、探し求めた花をくわえ、神々しいものとして、窓の向こうの海から歩いて来る。後ろに回していた翼を前に持ってくると、トンビは大きな白い花束を持っていた。
「トンビ」
ああ。トンビ、トンビ。この素晴らしい茶色い鳥が、私のために会いに来てくれた。
「トンビ」
畳に冷えた爪先をおろし、ひたひたと窓辺に寄れば、トンビは黒い爪をはやした脚でこの部屋の中にいる。
「トンビ、トンビ、トンビ」
抱きしめる。温かい。コートの中の長い胸の羽毛が、あさがおの頬を守る。トンビは両翼で、背中をかばうように抱いてくれる。その後ろで、白い木馬がたちが回転し続けている――。
目を開けた時には、もう夕暮れは終わりだった。
薄暮の部屋で白い花束だけ、畳に散乱している。
―6―
クグチは朝起きて何よりもまず、廃ビルにハツセリを探しに行く。帰ったらルネの高校を拠点に向坂ゴエイを探しうろつく。ACJ支社に帰ったら帰ったで、その建屋内も向坂ゴエイを探してくまなく歩き回る。
その後、十三班の待機室で昨日の日報を書く。それで昼前後。総務が持ってくる配給の昼食を食べ、寮でシャワーを浴びて一旦汗と泥を洗い流し、また今度はあさがおの様子を見るために外にでる。
島が部屋に来たのはまさに本日二度目の外出の支度を終えた時で、部屋の戸を開けた瞬間、外側から島が戸をノックしようとしていて、互いに驚くかたちとなった。
「ごめ
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