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Magic flare(マジック・フレア)
第6話 回転木馬ノ永イ夢想(後編)
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に尖ったものが混じる。「私たち母娘を捨てたのよ」

 ※

あさがお。私のあさがお。私はあなたに言おう言おうと思っていたことがあります。あの人は、あなたの父親は、思えば大学を出て国防技研に入ってから変わってしまった。些細なことでした。ある時あの人が手に怪我をして帰ってきました。機材の針で引っかいてしまったというのです。私は愚かでした。それが連中の仕業であることを見抜けなかったのですから。そのせいであなたをひとりぼっちにしてしまっているのですから。あの人は少しずつ変わっていきました。はじめに気付いた異変は文字の書き方で、あの人は漢字を書くときに、ハネの部分を1ミリか、1.1ミリか、せいぜい1.2ミリほどわずかに上向きにはねさせる書き方をする人だったのですが、それがだんだん伸びてきて、まるで別人のような、勢いだけの、なんだか粗雑な文字の書き方をするようになって、私が指摘すると、おかしいのはそんなことをいちいち気にする私の方だというようになって、家にもあまり帰ってこなくなり、帰ってきても表情は暗く、話もろくにしないで寝てしまうようになったのです。あの人は明るく、朗らかな人でしたから、そのように変わってしまったのは、その方が都合がいいからで、会話を減らすことであの人が別ものにすり替わってしまったことを私に気づかれないようにするために違いありません。私は偽のあの人がQ国に行ってしまった後、本物のあの人を見かけました。公園の花壇を人差し指ほどの大きさの小人が歩いていて、それがあの人でした。小人になったあの人は、私が呼んでも気づかずに、生い茂っていたチューリップの緑の茎をよいしょよいしょとよじ登り、あの筒のような形の花の中に入ってしまったのです。しゃがんでチューリップの中を覗きこんでも、あの人は見えませんでした。どうやら茎を通じて土の中に落ちてしまったようで、「おーい、おーい」と土の中から困ったように呼ぶあの人の声が聞こえてきました。私は夢中で掘り返しましたが、掘っても掘っても出てくるのは根っこと古い球根だけで、ついぞあの人を見つけることはできなかったのです。

 ※

愛しています。愛しています。あさがお。私の。私はあなたを守るために手を尽くしました。あの日、忌々しいあの日、私はあなたの泣き声を聞き、駆けつけたときあなたは揚げパンのかけらを落として地面に座りこんで泣いていた。あなたの手には爪でひっかいたようなあとがついていて、転んでできたにしては不自然な傷でした。私はそれがあいつらの仕業だと、あなたのお父さんに小人になる手術をした奴らのせいだとわかったから、私はあなたを連れて帰って、あなたの傷口を包丁で開き、悪い血を抜きました。あなたが泣いた時、私の胸は張り裂けんばかりでしたが、私の処置が良くてあなたは助かり、生き延びました。けれどあの男が、あなたのお父
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