第三十七話 盗賊
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アベルは珍しいモンスターを見た。
そのモンスターは幼い頃戦った『バブルスライム』に(体の色こそ違ったが)酷似していた。モンスターはまだアベルに気づいておらず、銀色に輝く液体状の体をゆらしていた。
向こうが気づいてないならばわざわざこちらから戦いを仕掛ける必要は無い。そう思いモンスターの所から立ち去り別の通路を進もうとしたところで声がした。
「おっ。はぐれメタルじゃねーか。中々良いモンスターだな」
声の主はマスクにパンツ(後は裸)に大ぶりの斧をかついだ男だった。
(何なんだ、あの男は)
アベルはまだ知らないことであったが男はカンダタという男が仕切る『カンダタ盗賊団』の一人であった。
盗賊団は基本的には洞窟へと宝の探索、貴族や大商人への強盗行為などをしているのだが最近は珍しいモンスターを見つけ乱獲、『物好き』な専門の闇商人に高額で売りさばくといったモンスター売買行為に手を染めている。
「悪いね、はぐれメタル。ちーとばかし斬らせてもらうわ」
男は、はぐれメタルにむかって斧をふりおろした。はぐれメタルはたちまち逃げようとするものの後ろからの斧の一撃に立ち止まった。動きを止めたはぐれメタルに斧があたる。
「おい、お前はぐれメタルはとても素早くてすぐに逃げられるって事忘れてやがったろ!」
「す、すまねぇ」
(もう一人いたのか!)
男達は挟み撃ちで、はぐれメタルを執拗に攻撃した。斧の一撃があたるたびにはぐれメタルは悲痛な声を上げる。
「きゅるきゅる!きゅる!」
はぐれメタルは液体状のオリハルコンという魔法金属によって余程の事では傷ひとつつかない。しかし痛みを感じることと傷がつくことは同義ではない。逃げようとするたびに攻撃され、その痛みで動きを止めてしまう。
そして、男達にとっては幸運ではぐれメタルにとっては不幸な事がひとつあった。それはこのはぐれメタルがとても臆病であったということだ。
抵抗できないのをいいことに男たちは斧を振り下ろす。もうアベルには見ていることなど出来なかった。
「やめろ!そのはぐれメタルに敵意は無いじゃないか!」
(はぐれメタルを攻撃する手は止めず)男達はアベルを睨んだ。
「何だお前。関係ねぇくせに俺達のやることにけちつけやがって」
「俺達、こんな珍しいモンスターを捕まえて『物好き』に売らないと食いっぱぐれちまうのよ」
「お前みたいなモンスター相手にもお優しいやつには理解できない世界ってもんがあんだよ。だから邪魔をするんだったら容赦しねえ」
「でも、そのはぐれメタル逃げ出すことも出来ずに苦しんでいるじゃないか!」
男ははぐれメタルを見やった。はぐれメタルはほんの少しの傷がついているくら
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