第十四章 水都市の聖女
第一話 死者と聖者
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投げかけられた問いに答えたのは、市長たちへの説明のため、黒板の前に立っていたジュリオであった。
「可能性は五分といったところでしょうか。先週から今までガリアに不審な動きは見られません。しかし一応の用心のため、国境付近には我が軍の精鋭である聖堂騎士隊が率いる四個連隊四千が駐屯しています。空にはロマリア皇国艦隊も控えていますので、ガリアでこれに対抗できる空中戦力は“両用艦隊”ぐらいです」
「国境付近に軍を配置するとは―――まるで戦争を望んでいるようですわね」
氷のような冷ややかな声をジュリオとヴィットーリオに掛けたのは、対面に座るアンリエッタであった。アンリエッタは不純物がない水を凍らせたかのような蒼く透明な瞳をジュリオたちに向けながら、白い頬の片方を僅かに持ち上げた。
「いえ、『まるで』ではなく戦争がしたいのですね。どうやらその美しいお顔の下には、随分と血に飢えた獣が住んでいるようで。ふふ……まあ、今のわたくしも人のことは兎や角言えませんが―――ねぇ」
スッと、細めた瞳が会議室を照らす魔法の光をキラリと反射させる。反射された光はまるで氷の刃物のように鋭く凍えた冷気をジュリオたち二人の身体を裂く。
ブルリと内蔵を突き抜け背中へと抜けた怖気に、ジュリオたちが身体を震わせると、アンリエッタの横に座るテーブルに目を落としていたルイズが口を開いた。
「“暗殺”でも“戦争”でもどうでもいいわよ……これが終わったらちゃんとシロウを返してくれるのなら、ね」
「……ええ、ミス・ヴァリエール。今回の件が解決すれば、必ずミスタ・シロウを貴方へお返しします」
にこやかな笑みを返すヴィットーリオに、ルイズは「ハっ」と小さく笑うと、顔を伏せた状態から対面する二人を睨めつけた。
「別に今すぐ返してくれてもいいんだけど?」
「残念ですがそれは無理ですね」
「……シロウなら独力で戻ってくるかもしれないわよ」
「以前も説明しましたが、彼がここまで戻ってくるのは不可能です。わたくしも彼を牢屋等で拘束出来るとは思ってはおりません。ですから―――」
「―――シロウでも戻ってこれない何処かへ飛ばした―――でしょ」
「はい、その通りです」
ルイズの言葉にヴィットーリオは頷いた。
ガリアへ対抗するための仲間である筈が、ルイズたちとヴィットーリオたちの間には、友好的なものは欠片もなかった。それどころか、ルイズたちはヴィットーリオたちに向ける、親の敵にでも向けるような殺気を隠そうともしていなかった。
何故、こんな事になったのか。
事の起こりは、今から二週間前の事であった。
ヴィットーリオが覚醒し発動させた虚無魔法“世界扉”が予想外の結果に終わったその翌日―――衛宮士郎の姿が消えた。
前日起きた出来事が出
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