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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
第一話 死者と聖者
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した瞬間、大臣は、否、玉座の間にいたジョゼフを除く全員が息を飲んだ。

「「「―――ッ!!?」」」

 ゴロリゴロリと玉座の間へと転がり込んできたのは、大きなボールのようなナニカ。薄暗い玉座の間では、遠目ではソレが何なのか直ぐに分からなかったが、明かりが届く場所までソレが転がってきた時、直ぐにソレが何なのか全員が強制的に理解させられた。

「ひ、ひひ、ひぃぃイイぃぃィッ!!?」

 女のような甲高い悲鳴が上がる。
 次々に転がってくるそれを前に、誰も動けず視線さえ離せない。
 ゴロリゴロリと次々に転がってくるそれは、転がる度に赤い線を滑らかな大理石の床に跡をつけていく。その跡を辿れば、欠けた残りがあるとでも伝えるかのように。
 丁度八十を数えるソレが玉座の間へと入ってくると、ソレはそれ以上転がってはこなかった。
 重く沈んだ空気が玉座の間へと満ちる。誰も声を上げない。ただ異様に荒い呼吸音が聞こえるだけ。声を上げた時、自分もソレの仲間入りするのではと、根拠のない恐怖により誰もが喋れない中、最初に口を開いたのは誰も予想だにしない人物であった。

「―――楽しめたかね?」
「「「ッッ!!??」」」

 ジョゼフの声に反射的に玉座へと視線を向けた面々は、目を疑った。
 つい数秒前まで玉座にはジョゼフ以外誰もいなかった。なのに、今彼らの目には玉座の背後に立つ黒い人影があった。黒いローブですっぽりと全身を覆った姿から、男か女かはハッキリとは出来ないが、背の高さや肩幅の広さから男だと思われる。そんな不審全開な男が背後に立っているにも関わらず、ジョゼフは平坦な声のまま淡々と問いかけていた。

「話すことは出来ると聞いていたん―――」
「―――足リン」
「ほう」

 荒い、喉が焼けて潰れたかのような低く雑な声であった。地獄の奥底から響いてくるような声に、大臣や護衛の者たちが自分の耳を抑え怯える子供のように蹲った。
 聞く者の心臓を削るような声を間近に聞きながら、しかしジョゼフは涼しい顔で頷く。

「お前は行かなくとも良かったのか? 例えあの男だろうと改良されたヨルムンガンドを相手では勝てぬかもしれんぞ?」
「玩具デ殺セルヨウナ男デハナイ」
「ならば、お前なら殺せると?」
「……マダ足リン」

 背後の男の言葉が予想外だったのか、ジョゼフは目を丸くすると背後を振り返り笑みを向けた。

「東薔薇騎士団を全滅させるほどの力でも足りんか」

 ジョゼフの視線が背後から前へと向けられる。
 玉座の前へと平伏するかのように綺麗に並んだ―――



「―――エミヤシロウヲ殺スニハ、マダ足リン」



 ―――生首へと。

 
 
 
 
 




 都市ロマリアから北北東へ三百
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