第三十六話 試練
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試練の洞窟。
グランバニアの次期国王となるのに必要な王位継承の印が隠された洞窟である。元は天然の洞窟だったが試練用に整備されたという経緯を持つ。
さて、試練の洞窟は次期国王の知恵と力を試す洞窟である。そのため一人で挑まないといけないのだが力があっても知恵がなかったら洞窟の奥まで辿り着けない、知恵だけなら魔物に襲われ最悪死亡と言った場合もある。(もっともそんなことにならぬように兵士を配備したりもしているのだが……)
アベルはその試練を順調に乗り越えていった。
最初の知恵の試練である、洞窟の先への入り口をどうやって開けるかを乗り越え野生の魔物を返り討ちにした。
なので、この先の試練も乗り越えられるだろうと思ったのだが、一つ困った事態になった。
「どこにいっても同じに見える……」
アベルは気付いていないがこれが第二の知恵の試練であった。正確には洞窟の一角が迷路となるように作り挑戦者が周りの些細な変化に気付き、上手く迷路を抜けられるかという内容なのだがアベルがじっくり考える暇もなくデビルダンサーやら呪いのマスクやらといった魔物の群れが襲ってきた。
デビルダンサーの張り手を首で回避し、呪いのマスクを両断する。他の魔物が襲い掛かる前にバギマで牽制し、懐からくの字をした炎の意匠の武器を投げつけ一網打尽にした。
「やれやれ……。本当にミレイに世話になりっぱなしだな僕……」
先程の武器を取り出し眺め、アベルはそう呟いた。
*
『炎のブーメラン』
そう呼ばれる武器がアベルの手に渡ったのは試練の前日だった。自室で試練の仕度をしていたアベルの元へ、ミレイが訪れたのである。
「アベル、ちょっと良い?」
「良いけど……なんで?」
「アベルに渡したい物があったから」
そう言って彼女は自分の道具袋を開けて中の物を幾つか手渡した。殆どが、ミレイに会ったとき50個近く彼女が持っていたエルフの飲み薬だったが一つ見慣れぬ物が混じっていた。
「これは、『炎のブーメラン』っていって攻撃力もさる事ながら攻撃したときにたまに炎の魔法が発動する優れもの!って武器屋のおじさんが言ってた」
「これを僕に?」
ミレイはもう色々してくれた。優れた装備や道具、路銀まで提供してくれたし彼女自身の魔法の力や奇抜な発想、とっさの機転に何度も助けられてきた。気持ちはうれしいがそこまでしなくても良い。
そうアベルが言うと少女は笑いながら言っていた。
「そんなの気にしなくたっていいよ。私だってみんなに助けられてきたし、そもそもアベルとヘンリーがいなきゃ私はきっとオラクルベリー周辺の森で死んでいたと思うから。だから……本当にアベルには感謝しているのよ」
*
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