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クルスニク・オーケストラ
第七楽章 コープス・ホープ
7-5小節
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りません」

 胸に手を当て、自信ありげに笑んでみせる。
 今まで何人もの後輩にしてきたことでも、いつだって上手くできてるか心配になる。

「エージェントの仕事は、増え続ける分史世界を破壊し、我々が生きる世界とそこで生きる命を、不可視の危難から守ることです。そのためにわたくしはここにいます。そして、貴方も」
「う…ハイ」
「よろしい」

 そこで電子音化された讃美歌が鳴った。ああ、わたくしに着信ですわ。失礼しますね。

「もしもし」
『ジゼル補佐ですか。ヴェルです。ルドガー様にかけるつもりでしたが繋がらずこのような形に。申し訳ありません』
「よろしくてよ。ルドガーには何を伝えればよろしいかしら」
『《カナンの道標》の回収を最優先に、とお伝えください』
「畏まりました」

 通話を切る。存在確率:高なのはすでに分かっていましたからね。《道標》の説明も兼ねてルドガーに伝えに行きましょう。

「ヴェルから?」
「鋭いですね。ええ、今回の任務の追加項目についてです」

 ルドガーに通じなかったから、と素直に伝えたら、彼、へこみそうですから。

「ルドガー。《カナンの道標》についてはご存じ?」
「みちしるべ?」

 社長もそこまではご説明なさらなかったみたいですわね。歩きながら説明しましょう。


「深々度分史に点在する特別な品です。《カナンの地》のある場所を示す物ですの」
「それは、地図みたいな?」

 Dr.マティスが会話に参加なさった。ミス・ロランドもエリーゼちゃんも、興味津々にわたくしの言葉に耳を傾けてらっしゃる。

「詳細はわたくしも存じ上げませんの。ただ、それがなければ、カナンの地に辿り着くことはおろか、見つけだすこともできない。それだけ重要な物だそうです」

 うそ。本当は誰より知ってる。だって他でもないわたくしが、《レコード》にあった情報をお伝えしたんですもの。
 知っているのはわたくしとユリウス室長、それにリドウ先生とヴェルと、ビズリー社長だけ。

 ……特にイヤな《記録》だったわ、《最強の骸殻能力者》の《道標》。それを得るために何が起きたか。
 《審判》が始まったばかりの頃で、ご先祖様は「最強」の定義が分からず、三日三晩かけて一族内で殺し合った。そうしてようやく、誰が《道標》かも分からないまま《道標》が出現した、なんて顛末だったんですもの。

「《道標》は全部で5つ。正史世界では失われたものばかり。ですので、分史世界に赴いて回収する必要がありますの」
「そうか! 分史世界では『最も異なるもの』が時歪の因子。失われた《道標》が時歪の因子になってる分史世界を見つける。それがエージェントの目的なんですね」
「ご明察ですわ、Dr.マティス。――《道標》の有無は事前に分
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