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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
06
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が小河内ダムに響いた。
 展望塔の窓ガラスは、爆発に面した物全てが砕け散った。
 爆音が外にいたセンターの職員とSAT隊員の視線を集める。
 一連の様子を眺めていた御堂は、輝き散るガラス片の中で拍手と一笑をモモに送る。

「やるじゃないか」

 そして、空いた窓からSATに向かって、御堂も手榴弾を投げてよこした。
 精鋭らしく、彼らはすぐに手榴弾に気付き、殺傷範囲内から退避する。
だがその行動は、天端に警戒の空白を作った。
 二度目の爆発に紛れて御堂は展望塔から外に出る。
 その隙間を通って、御堂は天端を悠々と横切り、多摩湖に飛び込んだ。
 水飛沫があがり、黒い水面が波打つ。
 そしてそのまま、御堂は姿を消したのだった。





 二台の黒のハイエースが山道を走る。
 奥多摩の奥地へ沈むその車の他に、この道を走る物は無かった。
 先頭のハイエースには捕縛したテロリストが乗せられ、次走の車内には傷を負った蔵馬とモモが、治療を終えてシートに身を預けていた。
 作戦を終えてから、二人は一言も話していない。
 ただ蔵馬は虚空の一点を睨み続け、モモは目を閉じ彼の隣にいる。
 拳一個分。それが二人の間にある距離だ。

「……負けました」

 ようやく出たモモの言葉は、敗北の宣言だった。
 言って、モモの目尻に涙が玉を作る。

「負けました」

 もう一度言い、貯まった涙が雫となって落ちた。

「私……義体なのに……素手の人間に……」

 涙は止まらず、モモのすすり泣く声が車内を満たす。
 義体なのに。戦うための兵器なのに。担当官を守る盾なのに。
 戦いに負け、命令を守れず、担当官は負傷した。
 今、モモは間違いなく、使えない兵器だった。
 使えない道具はどうなるのだろう。
 使用目的を果たせない道具は、一体何なのだろう。
 ――私は一体、何なのだろう。

「弱くて……ごめんなさい……ごめんなさい……クラマさん……ごめんなさい……」

 この夜、少女の泣声が止むことは無かった。
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