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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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「こんな時間に仕事とか、ついてないぜ」

「ぼやくなよ。お前元警察官だから慣れっこだろ」

 国立児童社会復帰センター作戦部の廊下を、蔵馬と、彼より数歳年下らしい短髪の男が第一会議室へ向かって歩いていた。
 短髪の名は初瀬伸一。タンポポという義体の担当官だ。
 時刻は午前二時八分。闇は深まり月星が最も輝きを帯びる頃だ。
 二人が会議室に入ると、センターの作戦部に所属する主要な職員はほぼ全員揃っていた。
 それぞれ適当に、壁際に積まれているパイプ椅子を出してきて座っている。

「あれ、姐さんは?」

「石室はすでに現場に向かっている」

 初瀬に応えるのは作戦部長の佐久間康夫だ。会議室の最奥、ホワイトボードの前で腕を組んでいる。
 白髪混じりの頭髪を、きっちりと後ろに撫でつけた凄味のある壮年の男だ。

「向かっているって、石室は奥多摩の山中で鹿狩り中だったはずでは?」

 石室の所在に、蔵馬が疑問を呈する。
 昼間、彼女は山へ鹿狩りへ行くと言っていた。今頃奥多摩の密林で獣の如く眠っているだろう。

「その通りだ。彼女らは現場の近くにいたから、そのまま向かってもらっている」

 入室してきた二人が席に着くのを待ち、佐久間は状況説明を始めた。

「小河内ダムが日本山林保護戦線と名乗るテロリストに占拠された。現在警視庁SATが投入されている
 テロリストの要求は日本にある全貯水ダムの解体と環境開発事業の凍結。
 組織規模は不明だが、AK-47とプラスチック爆弾を所持している事は確認されている。
 人質は発電所と近隣施設の職員三十八名。
 もし要求が明日朝六時まで呑まれなかった場合と、この事件がマスコミに漏れた場合はダムを爆破すると言っている。
 マスコミに情報が漏れないように、SATも最小限の人員しか送り込めずにいる状況だ」

「小河内ダム……すぐ近所ですね。なるほど、石室さんが近くにいる訳だ」
 常盤が頷く。

「まさに灯台下暗しって奴だな。誰か気付かなかったのかよ、仕事しろ諜報部」

 初瀬の声に、会議に参加していた諜報部員が眉を寄せるが、言い返せない。
 情報を集めるのが諜報部の仕事。
 それが、地元でのテロ活動を阻止どころか察知する事すらできなかった。
 諜報部の面子は丸つぶれだ。

「初瀬、余計なことを言うな」

 佐久間が初瀬を諌めるが、彼は言葉を連ねた。

「というか、SATが出動しているなら、俺たちは動かなくていいんじゃないですかね」

「普段なら放っておくが……今回は事情がある」

「事情?」

「先ほど警察が日本山林保護戦線の本部を家宅捜索して押収された資料が、こちらにも回されてきた。
その中の通話記録に、ある番号があった。先日常盤が押
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