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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
03
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たちの日常。彼女たちの、いつもの時間だった。





「というわけで、クラマさんが言うにはこの国は平和らしいですよ」

「ははは、蔵馬君らしいなあ」

 渋谷駅前のスターバックス。アザミはスーツの青年と並び、熱いキャラメルマキアートに、ストローを刺してちゅうちゅう吸っていた。
 隣の青年の名は常盤大輔。センターの職員で、アザミの担当官だ。柔和な風貌を持った美男子で、ホワイトモカを美味そうに飲む姿もキマッている。

「『これ』でも、平和なんですかね」

「平和の定義も人それぞれさ。『これ』も、まあ、ある意味平和な世の中じゃなきゃ出来ないことではあるよね」

 駅前スクランブル交差点に面したガラス張りの席に座る、二人の眼下。
 彼らが言う『これ』とは、スクランブル交差点内にひしめき合うデモ隊である。
 老若男女が、参加と離脱を繰り返し、人の波を作る。その流れを堰き止めるのは、警視庁から派遣された機動隊だ。このデモは渋谷駅前までしか道路使用の許可が下りていない。もしここより先へ行こうものなら、屈強な警察官たちが取り押さえにかかるだろう。
 しかしデモ隊の熱気は止まるところを知らず、それどころか次第に熱気から熱狂へとボルテージを上げつつある。
このままでは、いずれデモ隊と機動隊の間に何らかの衝突が起こるだろう。
 それを察してか機動隊の隊員たちは殺気立ち、またその殺気がデモ隊を刺激する。
 負の連鎖に陥った渋谷駅前。確かに蔵馬が言う平和とは乖離した光景だ。
 一触即発のスクランブル交差点を見下ろしながら、常盤は甘いホワイトモカを口に運ぶ。

「蔵馬君にとっての平和じゃない状況っていうのは、日本国民が外敵から攻撃を受けている状況のことを言うんだろうね。軍人らしい考え方だ」

「ならトキワさんはどう思っているんですか」

「ん? まあ、元警察官の立場からだと、平和ではないね。それにこれ、広く言えば外敵からの攻撃だし」

 アザミは敵という言葉に反応し、キャラメルマキアートの白い泡からデモ隊へと視線を変えた。

「このデモ隊には扇動家(アジテーター)が混じっている」

「アジ……何ですかそれ?」

「扇動家。一言で言うと盛り上げ屋さんだね。アザミちゃん、これが何のデモか知ってる?」

 問われ、首を横に振る。

「何故デモが起こるのかは?」

 再び横振り。

「なら順を追って話そうか。イタリアのジャコモ・ダンテは知っているね?」

「はい」

 ジャコモ・ダンテ。
 本国イタリアで数々のテロを実行した凶悪なテロリストだ。
イタリアで義体を運用していた社会福祉公社の主敵である五共和国派を率いて、去年一連の戦闘の後に身柄を拘束された。
 彼がいなければ、イタリアは義体
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