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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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尾行している最中だ。
 昨夜の捕り物で得た情報で、今日テロリストの会合があることを掴んだのだ。
 諜報部の調べでは情報交換程度の小さな集会らしい。だから今回は蔵馬とモモの二人だけだ。モモのタボールも目立つので置いてきた。
 浅草の東横インから出てきた彼らの後ろを着かず離れず追って、秋葉原までやってきたのだ。

「あの人たち、秋葉原で何するつもりなんでしょう?」

「会合だ。ブリーフィングで言ってただろう」

「こんな人の多い場所で、ですか?」

 モモが首を傾げ、黒髪がさらりと揺れる。

「ああ。連中は秋葉原を好む。あいつらが街中で何を言ってても、誰も気にしないからな」

「どうしてですか?」

「あいつらがどんな物騒なことを言っても、漫画かアニメの話だとしか思われないからだ」

「……?」

 モモは首の角度を深くする。
 内緒話はあえて人の多い所で、というのはよく言われる話だが、実際ただ人の多いだけの場所では、話す内容によってはかえって目立つこともある。何かを話すにもTPOを弁えなければならないのだ。
 蔵馬がそう教えると、モモはよく分かってないのか変な表情でフムフム頷いた。

「分からないならそう言え……。まあ例えるなら、混んでる動物園のちびっ子ふれあい広場で日本でAAV-7の運用を運用する上での課題は、なんて話をしてたら逆に目立つだろ?」

 ちょっと例えが下手すぎた。
 昔から人と話すのは得意な方ではなかったし、まして子供の相手などしたことがない。こういう時にはどういう風に言って聞かせればいいのだろうか……。

「何と無くですけど、分かりました」

「本当かよ……」

 彼女ら義体には、意識下に主だった兵器の情報が一通り刷り込まれている。むしろ今のような例え話の方が、分かりやすかったのかもしれない。
「話題にも相応しい場があるのは分かったんですけど、秋葉原だと大丈夫っていうのがよく分からないです。こんなにたくさん人がいるんだから、少なからず不審に思う人がいるんじゃないんですか?」

「その辺は生後半年のお前には少し実感がないだろうがな、日本って国は、少し前まで本当に平和だったんだ」

「平和?」

「この国じゃあ、今もそうだが、国防意識というものがほぼ皆無と言っていい。いや、国防レベルまで話を大きくしなくてもいいな。みんな自分が犯罪に巻き込まれるかもしれない可能性すら、考えもしない。暴力事件ってのは、それこそ遠い世界――漫画やアニメの中でしか普段は目にしない物だったんだよ」

「だから襲撃だとか爆破だとか言っても、まず漫画の話だろうと考えちゃうんですね。この街では特に」

「そういうことだ」

 さすがにテロリストも、往来でテロの計画内容を話したりはしない
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