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あかつきの少女たち Marionetta in Aurora.
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「大きな傷ではなかったから、少し筋肉と皮膚を替えただけだ」
義体外科医の正木が、目の下にクマを浮かべ、欠伸を噛み殺しながらモモの肩を撫でる。
「肩の傷より、この義体、少し条件付けで調整が入ったぞ。やっぱり作戦中に集中を欠いたのはマズかったみたいだ」
「まあ、そうだろうな……」
「じゃあ俺は上がるぞ。これから作戦に出すって言うから徹夜で直したんだ。頼むから今日はこれ以上俺に働かせないでくれよ」
「ああ、すまなかった」
正木は今度こそ大きな欠伸を放ち、蔵馬の背を軽く叩いて病室から出て行った。
義体はいくら傷付いても、即死でなければ直せる。
だが手術の度に、条件付けの度に使用される薬品が、彼女の脳の機能を少しずつ奪っていく。最後には脳が完全に機能を停止してしまうだろう。
今晩だけで、モモの寿命はどれだけ縮まったのだろうか。
「頼むから、もうこんなヘマをしないでくれよ」
蔵馬の声が呼び水になったのか、モモの瞼がかすかに動く。
同時に蔵馬の腕に巻かれた時計が、小さく短い電子音で午前六時を知らせた。
一日が始まる。
スーツの若い男と紅のカーデガンを羽織った少女が並んで歩いていた。
親子ほど歳は離れていないが、兄妹にも見えない。
通常なら怪訝の目で見られてもおかしくない組み合わせだが、この街では誰も気にしない。『そういう店』の客と従業員だと思われているのだろう。強いて言えば、少女の端正な容姿に目を釣られる男がそこそこいる程度だろうか。
秋葉原。他の街とは似ても似つかない、独自の進化を遂げた現代文化の中心地だ。
どこ彼処からけたたましい電子音や甘ったるいアニメ声が聞こえてくる。
最近のゲームPVやアニメCMがあちらこちらのモニターに映され、美少女キャラクターやら男前なキャラクターが描かれた極彩色のポスターが、どこを見ていても視界に入る。
かと思えばビルとビルの隙間にひっそりと、何やら電子機器の部品を売っているらしい飾り気のない質素な店が収まっていたりする。
一言でいえば、混沌としている。そんな街だ。
「凄いところですね」
美少女キャラクターがデカデカとプリントされた看板を見上げて、少女――モモは感極まったように呟いた。
「秋葉原に来たのは初めてだったか?」
隣を歩く蔵馬は、スーツのポケットから煙草を取り出し、しかし秋葉原は路上喫煙が禁止されている事を思い出して悲しそうに元に戻す。
「はい。何だか目がチカチカします」
「確かに、少し目が疲れる街ではあるな……っと、曲がったぞ」
蔵馬が目で追う先、青いブルゾンと灰色のパーカーの男二人組が、中央通りからドンキホーテの角を右に曲がった。
今二人は、この男たちを
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