影とカゲ2
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用を足したところで、火神は手を洗うべくハンカチを取り出し、洗面台の前に立つ。
水を出して、手を洗おうとした時
「かがみ君……、火神君……」
ふと、そんな声がまた聞こえてきた。
水を止めて、ふっと顔を上げる。
「ん?誰だ?」
今度はしっかりと自分を呼ぶ声が聞こえた。
だが、今現在、トイレには火神一人しかいない。もちろん、出て行った者や、入ってこようとしている人物も居ない。
不可思議な現象に、思わず冷や汗が伝う。
今頃、自分の顔は青ざめているだろう…と思いつつ、身体を震わせる。
火神はホラー等の怖いものが苦手なのだ
「気、気のせいだ…!なんていうんだか……、あぁ、空耳だ!」
自分に言い聞かせるようにそうぶつぶつ言い始める火神。
「誰の声が空耳ですか。酷いです火神君」
ふと、聞き覚えのある少し高めで落ち着きのある声……さっきまでHRに出席していなかった人の声が聞こえて、火神の肩がピクッと震える。
「うおっ!?」
バクバクと高鳴っている心臓を抑えて、辺りを見渡しながら火神は苛立ったように叫ぶ。
「てめー黒子!お前の仕業かよ!どこに隠れてやがる!出てきやがれ!」
辺りを見渡してはいるが、黒子の姿はやはり見えず、個室に隠れているのかと一つ一つ開けていこうかと動こうとした時、黒子は言った。
「火神君。僕は目の前に居ますよ」
「あ……!?」
訳の分からない答えが黒子から返ってきて、火神の怒りがさらに上がる。
目の前…と言われても、火神の前には、洗面台一つ一つに丁寧に置かれている綺麗な火神しかない。
きょとんとした表情を作りながら、火神は首を傾げる
「俺しかねーじゃねぇか」
その言葉にクスリと小さく笑いながら黒子は続ける
「よーく見てください」
「あん……?」
促され、じっと鏡を見つめていると、うっすらとではあったが、火神の後ろから鏡に映る黒子の姿があったのだ。
その光景に思わず火神から冷や汗が流れる。
「は…?え…!?」
後ろに居るのかとばっと勢いよく振り返ってみるが、後ろに黒子も以外の人も居らず、また鏡をみると、でも黒子は映っている。
…これは一体どういうことなのだろうか。
黒子は鏡の中にでもいんのか…!という、ありえない思考になり、混乱する火神に、黒子はいつも通りの落ち着いていてm淡々とした口調で告げる。
「…どうやら僕、影になってるみたいなんです」
「………はああああああああぁぁぁぁあああ!!?」
淡々とあまりにも言うので、火神の反応が微妙に遅れたが。
大きな叫びがトイレ中に響き渡ったのであった……。
一話(FIN
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