第四章
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いわ、ひどいわこの嘘吐き」
そしてヘレナの言葉が。完全に二人が主役であった。
「何か主役になってない?」
「そうなってるよね」
また観客達がひそひそと話をする。
「凄い演技だよ」
「何か別格」
誰もがそう見ていた。そしてその中で芝居は佳境に入っていく。それと共に二人の芝居はさらに熱を帯び最早完全に周りをその中に引き込んでしまっていた。
「あれ程ハーミアを思い詰めていた心が急に淡雪のように消えてしまい」
その場面ではヘレナを演じている真琴をじっと見ていた。
「何時までも見飽きぬのはヘレナだけでございます」
真琴もそれはまた同じであった。じっと遼平を見詰めている。そうして言うのだった。
「ディミトリアスという宝を拾ったけれど」
その琥珀の目を彼から離しはしない。ヘレナとして語る。
「私のものと言われてもまだ信じられません」
「僕達は本当に目が覚めているのだろうか」
遼平はその言葉を受けて言う。
「何かまだ寝ていて夢を見ているようだ」
じっと見詰め合い話をしている。そんな二人を見て彼等のクラスメイト達は言うのだった。
「あの二人まさか」
「かなり怪しいわね」
そう観客席でヒソヒソと話をするのであった。
「顔が完全に真剣じゃない」
「あれってお芝居でしょ?」
「どうだか」
女の子の一人がそれに異議を呈する。
「それも怪しいわよ」
「けれどさ、あれって」
「ねえ」
ここで皆遼平を見るのであった。
「若田部の奴が一人騒いでるだけで」
「そうなんじゃないの?」
「甘いわね」
しかしその言葉にはこう答えが返って来た。
「それもバニラアイスより甘いわよ」
「そうかしら」
「しかもトッピングやり放題した時よりも甘いわ」
また随分胸焼けしそうな例えである。少なくともシェークスピアの時代にはない例えだ。もっとも何かと大袈裟な表現の好きなシェークスピアであるからアイスクリームを知っていれば使っていたかも知れないが。
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