暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
奇襲強行 〜現れる毒蛇の牙〜
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 召喚してからかれこれ1週間ほど一緒にいることになるが、短い期間ながらそれなりにフェンサーの人柄は把握したつもりだ。
 彼女にとって彼がどれほどの存在だったかは知る由もないが、それでもフェンサーは俺と似たような質だと思っている。

 だからこそ──────

「願いがあることは聞いてたけど、願いが何なのかまでは聞いてなかったな」
「そうね。でも私は誰かを生き返らせたいとか、自分の生をやり直したいなんて思っていないわよ」

 この少女がそんな願いを持ち得るはずがないと、心の何処かで確信があった。

 それは先ほどフェンサーが言った言葉に、自身の根底の価値観を自覚したように。

「無くしたものは戻らない。唯一無二だからこそ大切なのよ。
 終わったコトを都合よく取り繕うのも、過去にしがみついて立ち止まるのも間違っているもの」

 歩みを止めたり、現在(いま)を立ち返るような選択はしないのだと。
 初めて彼女の願いを聞いたときに、想いの成就に聖杯が必要不可欠だと言わなかったのはそういうことだ。

 ならば一層不可解なのはその願いの内容だ。
 聖杯が目的でないのなら、どうしてフェンサーは聖杯戦争に呼び出されたのか。

 それも聖杯戦争の今までのルールを覆す、八騎目のサーヴァントとして。
 少なくとも聖杯戦争に参加することは、彼女の願いを叶える前提条件のはずだ。

 いくら考えても、その願いが何なのかまるで見当がつかない。

「なあフェンサー。結局、おまえの願いは……」
「待ってレイジ」

 急に実体化し、前に出るフェンサー。

 何事かと思い目を向ければ、そこには白い少女が立っていた。
 少女の背後に広がるのは夜の闇ではなく、漆黒の狂戦士の巨大な体躯。

 いつかの夜の焼き直しのように。

 違うことといえば、対峙しているのが俺とフェンサーの二人だけな点か。

「イリヤ、スフィール……」
「こんばんは、レイジ。こんなところで会うなんて奇遇ね?」

 笑顔を浮かべたまま挨拶をしてくる。
 彼女の様子は昼間に公園で出会った時と変わらない。

 無垢な微笑みと無邪気な声は、しかし今の状況では別の色を帯びている。
 天使のようだと例えても遜色ないその笑顔が、夜闇と月光が作り出す陰影により魔性を宿す。

「奇遇、だな。今夜は散歩か?」
「ふふふ。ええ、たまには夜にも出歩いてみるものね。素敵な出会いがあるもの」

 以前から彼女とはやたらと縁があるとは思っていたが、ここでそんな因果を実感したくはなかった。

 公園で談笑していたときとは違う。
 夜半も過ぎた時分、互いにサーヴァントを引き連れ、周囲に人影はない。

 未だ口火を切っていないというだけで、此処は既に戦場だ
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