暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
奇襲強行 〜現れる毒蛇の牙〜
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るわけはないな。
これからまたどう戦局が動いていくかは読めないが、一筋縄ではいかないことだけは確かだ。
今日はもう引き上げるしかない。
「よし、帰るぞ」
必要なくなったので視界の共有を切る。
そうして踵を返すも、まだ夜闇の向こうを見つめるフェンサー。
これ以上は何もないと思ったが、彼女には何か見えているのだろうか。
後ろから少しだけ垣間見えた表情は、俺には今まで一度も見せたことのない感情に揺れているように見えた。
「さて、どうするかね……残りはランサーくらいしか詳細不明のサーヴァント居ないしな……」
凛の奇襲決行を偵察した帰り道。
霊体化させたフェンサーを傍に控えさせ、暗い夜道を歩いている。
帰りがてらずっと今後の立ち回りを考えていたが、ライダーが脱落した状況のまま戦局は停滞している。
サーヴァント数人で掛からなければ打倒困難なバーサーカー。
とんでもない魔力の貯蔵とアサシンを配下に置くキャスター。
それに対処するため同盟を組んだセイバー組とアーチャー組。
よくよく考えれば3つの勢力が、三つ巴の睨み合いになっているようにも思える。
「あれ? もしかして俺とフェンサー孤立気味なんじゃね?」
「現状を単に外側から見るとそうかもしれないわね。でもキャスターを倒せばまた状況は動くでしょう」
「どうかなー。あの二人、なんだかんだ最後まで一緒に戦う気がしてきてるんだけど」
「リンがあっちに行っちゃってご不満?」
「…………おまえはすぐにそっちに話を持っていくな。何だ、生前はロクな恋愛出来なかったのか?」
「え────?」
あ、なんかきょとんとしてる。
俺の反応が予想外だったのか、逆に自分の事を聞かれるとは思っていなかったのか。
前にも考えたことはあるが、彼女の生前がどんなものだったにせよ、英霊になるような人間がまともな人生を送ったとはあまり思えない。
神話や伝説……現世に伝えられるそうした英雄譚は、その主役たる人物の終わりを以て幕を閉じることが多い。
幕引き自体は死のみであるということはないが、重要なのは彼らが抱く大望や大義を成し終えたかどうかだ。
総じて未練や無念を残している者ばかりだが、それこそサーヴァントとして呼び出される英霊などその最たる者達だろう。
聖杯を求めて呼び出される以上、某かの望みを持っているのは間違いないのだから。
「いやな、君色々隠してるじゃん。実は愛する人を〜みたいな願いでもあるのかと」
「……いいところを突いたわね」
「え、マジでそうなの!?」
夢での彼女の過去から察するに、そういう願いであっても不思議ではなかったが…………
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