暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
奇襲強行 〜現れる毒蛇の牙〜
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ことのない業を躱すなどほとんど不可能に近い。
 それでもギリギリのところでセイバーが踏み止まっているのは、彼女の技能である直感のおかげである。

 なんとか致命打を凌げているが、それも時間の問題か。
 刻一刻とセイバーは削られている。トドメの段階になれば成す術はない。

 そうして──────

「終わった……か」

 首を掴み上げられ、とんでもない速度で塀に叩きつけられる。

 気絶したか、意識はあっても立ち上がれないか。
 詳細は定かではないが、セイバーが行動不能に陥ったのは間違いなかった。

 残るは士郎と凛の二人だけ。
 あまりの事態に呆然としていたようだがこれで決着だ。

 どうあってもあの二人に生き残る道はない。

 葛木とキャスター、相手がどちらか一人であっても容易に殺されるだろう。

「本当に手を出さなくていいの?」
「……ふん、凛の自己責任だよ。惜しい奴らを亡くすとは思うが、それだけだな」

 あの二人に対して個人的に思うところはあるが、ここで死ぬのなら仕方がない。

 間柄で言えば友人といってもいい。そんな二人が今まさに殺されようとしている。
 状況的に難しいこととはいえ、助けようともせずにその死を傍観できるほど薄情な自分に改めて嫌気が差したくらいだ。

 失くすことに慣れたということなのか。
 最も身近な肉親の全てを亡くしている……これ以上の喪失などありえないからこそ、達観しているとも取れる。

 だけど──────



「終わったコトと、終わろうとしているコトは別よ?」



 自身の中の矛盾、齟齬、違和感。
 噛み合わないと感じていた隙間を突くような一言だった。

 終わったことと終わろうとしていること。

 無くしてしまったモノと、まだ手が届くモノは話が違う。

 そもそも俺が無くなったモノに対して、何も感じることがないのは何故か。
 惜しいとは思う。悲しいとも思う。悔しさや苦しさ、辛い感情がゼロなわけじゃない。

 人よりそれが希薄なのは、誰よりも失うことへの理解が深いから。

 無くしたものは返らない……返ってこないのだ。
 取り戻せるかどうかの是非は関係ない。まず取り戻そうなどという気は一切ない(・・・・・・・・・・・・・・・・)
 全く同じ物を手に出来るとしても、無くした物とほぼ変わらない物を用意出来るとしても。

 それはただの代わりであって、無くしたモノそのものじゃない。

 自分の我が儘でそんな代替に手を出すということは、大切だった何かへの冒涜だと信じている。
 無くしたものが大切であれば大切であるほど、その無くしてしまった何かを蔑ろにしているように思うのだ。

 だから本当に俺がしなけれ
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