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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十五話 帝国の実力者
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本来ならお前達はピラミッドの底辺に居る筈の人間なのだ。嘘では無いぞ、俺が良い例だ。亡命して三年、ただの一度も戦場に出る事も無く飼い殺しにされた。ようやく戦場に出られると思えばどうしようもないお荷物艦隊に配属された。その後も露骨に切り捨てられそうになった事が有る、何度絶望した事か……。幸い生き延びて此処まで来たが今思えば信じられない程に幸運だったと言える。公と出会っていなければ間違いなく俺は亡命した事を後悔しながら不本意な一生を終えていた筈だ、この帝国の、底辺でな」

やはりそうか、あのイゼルローンでの一件で分かっていた事だがリューネブルクとブラウンシュバイク公の繋がりは非常に強い。何が二人を結びつけたかは分からない。どう見ても接点など感じられない二人だ。だが戦場で助け合う事で深め合った絆なのだろう。

「帝国は今政治改革を進めている。平民の権利を拡大し貴族の放埓を抑えようとしているのだ。推進者はブラウンシュバイク公だ。当然だが貴族達はその事を面白く思っておらん。お前達がドジを踏めば貴族達はここぞとばかりに公を責めるだろう。一つ間違えば改革が頓挫しかねん、帝国の未来を左右しかねんのだ」
彼方此方で呻き声が聞こえた。皆の顔が強張っている、おそらくは俺も強張っているだろう。

「リューネブルク、つまり俺達は帝国の政争に巻き込まれるという事か」
俺が問い掛けるとリューネブルクは首を横に振った。
「そうではない、もう捲き込まれているのだ、シェーンコップ。お前達が公に引き取られた時からな。公はそのリスクを承知の上でお前達を迎え入れた。そうでなければお前達の立場は惨めなものになる、そう思ったのだろう。お前達もそのリスクを理解しなければならん」

再び呻き声が聞こえた。俺も呻きたい、思った以上に俺達は厄介な立場に居る。ブラウンシュバイク公が俺達に好意を示したのは事実だ。だがそれだけで済む話では無かった。俺達は右も左も碌に分からぬ状況でブラウンシュバイク公の与党だと皆から認定されたというわけだ。

「だから浮かれるな、ドジを踏むなと言っている」
「……」
「公の足手纏いになる事は俺が許さん。もし、そうなるようであればその時は……」
「俺達を殺すか?」
リューネブルクが俺の答えに冷笑を浮かべた。

「甘いな、シェーンコップ。俺に殺して貰える等と思うな、俺はそれほど優しくは無い、自分で始末をつけろ」
「……」
「帝国屈指の実力者の期待を裏切った以上、お前達に未来は無い。この帝国の底辺で惨めに朽ち果てるか、或いは戦場で無惨に切り捨てられるかだ。その場で死んだ方がマシだろうよ、それだけは保証してやる」
そう言うとリューネブルクは背を向けて会議室を出て行った。



帝国暦488年  5月 12日  オーディン  ブラウンシュバイク公
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