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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第四十五話 帝国の実力者
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にとっては義理とはいえ孫になる。軍では元帥、帝国軍三長官の一人として宇宙艦隊を預かる身だ。そして今、帝国では皇族は少ない。当然だがその配偶者の存在は非常に大きいのだ」

なるほど、と思った。大貴族、皇孫との姻戚関係、そして宇宙艦隊司令長官。どれ一つとっても皇帝との関係は近しいものになるだろう。それを全て備えている。若いが帝国屈指の実力者というのはそういう事か、軍人としての評価だけではないのだ。同盟に居ては見えない事実だな。

「ではシェーンコップ、もう一度お前に訊こう。お前達がブラウンシュバイク公爵邸を警備するという事の政治的な意味は何だ?」
皆の視線が俺に集まった。リューネブルクは相変わらず冷たい目で俺を見ている。俺が何処までこの帝国を理解しているか、試しているらしい。下手な答えは出来ん。

「皇族二人を含むもっとも皇帝陛下に近しい方々が住む屋敷を警備する事になった。帝国で最も高貴な方々を守れるだけの能力が有り信頼出来ると評価していただいた。そういう事か」
“フン”とリューネブルクが鼻を鳴らした。
「五十点だな、見所が有ると思っていたが予想外に出来の悪い奴だ」
皆が苦笑するのが分かった。からかっていると思ったのだろう。

「随分と点が辛いではないか」
「点が辛い? 馬鹿を言え、甘いくらいだ」
ふむ、リューネブルクの視線は相変わらず冷たい。からかっているわけでは無いな。隊員達も気付いたのだろう、皆の顔から苦笑が消えた。

「俺は何か見落としているか?」
「ああ、見落としている。言ったはずだぞ、帝国程人間関係が、それによる力関係が重視される世界は無いと」
「……」
確かにそんな事を言ったな。人間関係、力関係か……。リューネブルクは何を俺に伝えようとしているのだ? リューネブルクが一歩俺に近付いた。そしてニヤッと笑った。

「お前は公とお前達の関係を理解した。ならばそれを一歩進めて見ろ。お前達とお前達以外の人間関係、力関係に」
囁くような声だった。だが俺には雷鳴の様に響いた。
「……そうか、そういう事か」
俺が溜息を吐くとリューネブルクが“ようやく分かったか”と満足そうに頷いた。

「ブラウンシュバイク公はお前達を預かりお前達に対して絶対的な信頼を示した。お前達は公の後ろ盾を得たのだ。その事は貴族、政治家、軍人、平民、皆が理解する筈だ。誰もお前達を侮辱する事は有るまい、そんな事をすれば公を敵に回す事になる。オフレッサー装甲擲弾兵総監もお前達を見て顔は顰めてもそれ以上の事は出来ん。そんな事をすればオフレッサーといえども首が飛ぶ、それが帝国だ」
それが帝国か……。役職や地位では無く人と人との結び付きが大きな意味を持つ。

「だから浮かれるな」
リューネブルクがまた厳しい声を出した。皆を睨み据えている。

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