暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
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 窓から斜陽が差し込み、食べきった皿がきらきらと白く輝く。
 食事の合間、一言も話す事無く、ただ黙々と、七乃と雛里の二人は料理を口に運んでいた。
 舌鼓を打つ程おいしいはずなのに、まるで紙を食べているかのように味気なく感じられ、勿体ないな、と思ったのは……どんな事に対しても無駄が嫌いな七乃。
 対して、雛里は表情を綻ばせて、細やかに出された幾多の料理一つ一つを噛みしめて食べていた。

――はんばぁぐも、おむらいすも、鮭のむにえるも……やっぱりおいしい。

 愛しい彼が伝えた料理である。この店で再び食べられる日を、どれほど心待ちにしていた事か。彼が居たという証明を思い出以外で感じられて、雛里はただ、幸せだった。
 しかし……最後に出てきた甘味を見て、一瞬だけ表情が曇る。うるうると潤ませた瞳は悲哀から。目を瞑って、どうにか零さないようにと堪えた。
 そしてその甘味を見た七乃も同様に、ニコニコ笑顔がわずかに崩れた。彼女の主が、その甘味を好きになったのは記憶に新しい。
 艶やかなメイプルシロップで彩られた小さなホットケーキ。思い出は二人共の中にあった。
 もふもふと食べる間も言葉は発されず、食べ終わった頃に、かちゃり、と食器を置いて果実水で口を潤す。

「ごちそうさまでした」
「御馳走様でした」

 きゅっと御手拭きで口を一拭い。ほう、と息を付いたのはどちらも同じく。
 後ろの兵士達は無言なれど……ビシリ、と張りつめた場の空気の変化を敏感に感じ取った。

「まず一つお聞きしてもいいですか?」
「……どうぞ」

 先に口を開いたのは七乃。緩い吐息を吐き出して、翡翠の双眸に視線を重ねる。

「どうやってこの街に忍び込みました?」

 実の所、七乃は曹操軍が北上してきている事は知っていた。対応に軍を動かしても良かったが、官渡との連携上、そして夕の指示があったから、まだしていなかっただけである。
 そんな中、雛里がこの街に来たという情報は入っていなかった。七乃が子飼いにしている草の監視の目を掻い潜って入り込むのは……容易では無いというのに。

「……何時、とは聞かないんですね」

 教えるつもりは無いらしく、雛里は話をずらして答えを言わない。
 なるほど、と七乃は一つ頷く。
 協力者無くしては監視を潜り抜ける事など出来ない。それを教えてそのモノがどうなるか等、誰でも予想出来る。殺すだけだ。民であれなんであれ、袁家の敵なのだから。
 後で調べよう、と思考を切り替えてまた少女を見つめる。

 通常ならば、敵軍からの使者というからには手順を踏んで堂々と面会するモノ。しかし雛里はそうしなかった。
 文を内密に送ってわざわざ七乃だけを……絶対に情報が漏れないこの店に呼び出した。その狙いは……たった一つ、袁家の耳
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