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乱世の確率事象改変
籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
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図は事前準備を怠らず、上層部と深く繋がっているのだが……やはり麗羽の首だけでは足りない。
 よって、袁家側としては、イロイロと対策の為に美羽の身柄を手元に置きたいのは必然。どんな手を使おうとも、美羽と七乃を引きはがしたであろう。
 七乃はそれを読み切って、隠ぺいした上で何処かに逃がすしかなかったのだ。

 そうして選んだ場所が此処、娘娘の二号店。
 敵領地のど真ん中に送るという、あり得ない決断。七乃の美羽に対する溺愛振りを知っていれば知っている程、思考の中から外されるはずの策であった。
 もう一つ、情報を何よりも大切にする七乃ならではの策も盛り込まれている。
 今、この街には覇王が居ない。軍も居ない。区画警備隊ですら、軍が居ない間は仕事がさらに忙しい。
 栄えているという事は人が集まる。なら、そこに不審なモノが混じっていても……気付かれにくい。
 その事から、七乃は店長に対して暗にこう言っている。

『この少女に何かあったなら、店にとっても街にとっても、最悪の事態を起こせるが、如何に』

 商売人はバカでは出来ない。名店に育て上げるには並の軍師以上に利害を計算しなければならない。
 店長の頭の良さと曹操軍との関わりを理解した上で、七乃は脅しを掛けているのだ。
 たった一人が生き残る為に全てを巻き込む彼女は、他の命がどれだけ死のうが、悪辣や外道と言われようが気にしない。
 店長は揚州での政治の噂は耳に挟んでいる。何より、洛陽大火の本当の原因も親しいモノ達から聞いて知っている。だから、七乃達袁家がこの街を燃やすのも考えているのではないかと訝しんでいた。
 疑念は一つ与えるだけで策となる。ましてや、この街全ての利害を自分の行動如何で左右するのは……高級料理店の店主如きの手には負えない。

 店長と美羽の再会はついこの間。
 建業の街の視察の時に関わった豪著な服に身を包んでいたどこぞの豪族の娘と思われる少女が、みすぼらしい姿で老年の男に連れられて来た。
 厄介事だとは思ったが、戦乱の世ならば没落など日常茶飯事。客引きをしてくれたという個人的な恩もあるし、雇う事にした。此処が難民の受け入れにもある程度寛容であると伝えれば、老年の男は残してきた家族を連れてくると出て行って……それっきり。
 前に会った時に一緒に居た付き人の存在を聞いてみるが泣くばかり。漸く零す言葉は、行く所も帰る所も無い、とだけ。
 しかしその言葉が、店長の胸に突き刺さるは当然であろう。大切な友達は……家を失ってしまったのだから。
 だからこそ、せめて働けるようにと基礎教育をしながらの給仕生活に出し始めて数日。店長は店に来た軍の伝令より、美羽の本当の名を知る事となった。
 雇った手前、もはや手遅れ。
 華琳に対しても不義を取るカタチに持って行かれてしま
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