籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
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いでください。別に取って食おうってわけでは無いですから」
「……」
びくっ、と肩を跳ねさせた少女を横目で確認しながら、店長は頭からバンダナをするりと外した。
「余り……というか心底好きでは無いですよ、こういうやり方は。まさかあなたの正体が……噂に聞く袁術だとは思いませんでした」
細められた目は鋭く、普段の優しい店長のモノではない。
少女――――美羽は顔を絶望に堕ち込ませ、冷や汗を流しながら首を思いっ切り左右に振り始めた。
「な、なな、何を言っておるのじゃ!? 妾は袁術などでは、決してない!」
必死で否定する姿に、疲れたような表情を浮かべて、店長はまた大きなため息をついた。
「そう大きな声を出さないでください。他の子達にバレてしまいますよ?」
言うと、少女はすぐさま口を両手で塞ぐ。
肯定していると同じであろうに、と呆れ返るも、その仕草が誰かと被って見えて、店長は眉根を寄せた。心に湧き立つのは、昏い暗い怨嗟と怒り。
――直ぐに放り出してしまってもいいんですけどねぇ……
店長は武人でも無ければ、憎しみを飲み下せる月のような王でも無い。ただの料理人であり、この店の主である。周りのモノには勘違いされがちだが、決して優しいだけでは無い。人を憎みもするし、恨みもする。例え少女の見た目であろうと、寛大な心を以って接するのは……秋斗や白蓮達に何があったかを思うと到底無理な話。
何より、この店の存続が危うくなるのならば、何かしら切り捨てなければならない事もある。店長にとって娘娘という店は、白蓮にとっての幽州と同質であるのだから。
店の為にだけは冷徹な王の如くなるとしても、友に対しては普通の人。それが店長であった。
有名な店であるのだから名を大事にしなければならないのは言うまでも無く。その店に、敵対国の重要人物が匿われていたとなればどうなるのか。
店長の一番嫌う策を七乃は仕掛けた。いや、美羽の身を危険に晒してしまわなければならない程の状況に追い詰められていた、と言い変えよう。
どう足掻いても美羽の身柄は袁家の大本に送らざるを得なかったのだ。
一度の敗北が全てを壊す。信用や信頼は作るのは難しいくせに、壊れるのは一瞬である。
何よりも、劉表の動きが……袁家にとっては最悪過ぎた。
帝に弓を引く大罪人の家柄。官渡の戦を押し通した側としては、勝てなければもう後が無い。
ではあっても、家の存続だけを望むのならば抜け道は少なくも存在する。
洛陽で雪蓮が帝に示したように、責の所在は当主とその臣下達にこそある、と全てをなすりつける事で、袁家自体は存続が可能なのだ。そういう常識が今の大陸では出来上がってしまっているというよりかは、袁家が幅広く抜け道を用意しているだけ。
その為に郭
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