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乱世の確率事象改変
籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
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の全てを下さい。あなたが“娘娘二号店に逃がした”袁公路の命を対価に」




 †




 活気溢れる店内にて、一人の少女がわたわたと動いていた。
 二つに結った金髪を跳ねさせて、給仕服に身を包んだ彼女が零さないように皿を運んでいく。必死に汗を流す彼女は、今日も今日とてお客の為に。
 客の皆は微笑ましく笑顔を向け、以前働いていた白髪に藍を混ぜた髪の少女を思い出す。幼い見た目の少女が働く姿は、やはり微笑ましいらしい。

「“みゅう”ちゃーん! 休憩だってー!」
「了解なのじゃ!」

 共に働く給仕から声を掛けられて、彼女はとてとてと休憩室に向かっていく。
 みゅう、と呼ばれた彼女は、体力が無いのか階段を上るのも必死な様子。やっと着いた休憩室で、今回一緒の休憩を取っている女性の前の椅子に腰を下ろした。

「どう? そろそろ七日くらいになるけど、此処の生活にも慣れた?」
「……」

 先程まで元気な声を上げてはいたが、それは客の前であればこそ。今の少女は、落ち込んだ顔で言葉を紡ぐ事すらしなかった。
 ふぅ、と息を一つ付いて、女性は魔法瓶からお茶を入れて行く。
 少女の目の前に湯飲みを置き、同時に“メイプルシロップ”で味付けを施してあるお菓子を出した。

「店長が受け入れたんだから何も聞かないけど、私は元気なみゅうちゃんが好きだなー」
「……」
「ほら、店長の料理は皆の笑顔を作る料理だし、食べて食べてっ」
「……」

 給仕が何を言っても糠に釘。返してくれる言葉は一つも無かった。
 ただ、お菓子だけは食べるようで、少女は黙々とそれを口に運んでいく。
 またため息を一つ。何か元気を出して貰ういい手は無いモノか、と給仕が考えた所で、休憩室の扉が二回、音を立てた。
 途端に、緊張した面持ちになったのは金髪の少女。

「はーい……って、店長? どうしたんですか?」

 入ってきたのは娘娘の二号店で厨房を司る給仕たちの憧れ、この店の店長そので人であった。
 カチコチと固まった少女は何も話さず、赤いバンダナを巻いた店長を見つめるだけ。

「いえ、私も休憩をと思いまして。あと、少しこの子を連れて行きますよ」
「……? 分かりました。あ、みゅうちゃん、お菓子持って行っていいからね」

 本人に確認もせず、少女に手招きを一つした店長は、給仕から言われずともお菓子の入れ物を机から持ち上げて扉に向かう。
 怯えたそぶりで後を追う少女の表情は……ただ暗かった。
 奥の奥、上客が来なければ使用しない部屋が五つ。その中から、店長は“麒麟の間”を選んで少女を中に誘った。
 少女が椅子に座るのを見てから、コトリ……と机にお菓子が置かれる。対面に座して、店長は大きく疲れた息を零した。

「そう怯えな
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