籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
[3/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も無く、他の血縁者に見下されながら日陰で生活するくらいしか未来が無い。名声の劣った血族が虐げられるは言うに及ばず、政略の駒としても扱い辛く、些か手に余る。
妾以下の位置に置かれて予備の存在にでも召されれば上出来で、偏った趣味の豪族の慰み者になるなら悪い方の展開。しかし一番酷いのは……敗北した袁術軍の兵達や戦に向かった袁紹軍の兵に対して、士気を上げる為の八つ当たり先……言うなれば、官渡での戦中や戦後のあらゆる欲望や怨嗟のはけ口に置かれて使い捨てられる事だ。袁家が合併したのだから、美羽の存在価値はあらゆる意味で低い。
美羽の見た目は美しい。少女であろうと、喰らう男は居る。否、性別が女であればそれでいい……なんて考えが命の掛かっている戦場前の極限状態ではありきたり。それほど戦場は悍ましいモノで、士気を上げるというのは大切な事だ。離反する兵が出ないように、敗北の責任を押し付ける理不尽な怒りのはけ口にでも出来たら儲けもの。人の中に潜むケダモノは、一度解き放たれれば抑えが効かない。
敗北後ならば、責を取らされて首が飛ぶだけならまだ可愛らしい。名を奪われ、貞操を蹂躙され、散々どこの誰とも知らぬ者達に獣欲のはけ口として使い回された後で路地裏に放り出されるか、責を取らされて殺されるか、二束三文で娼館等に売り飛ばされるか……それらの可能性も無きにしも非ず。
袁家は少しでも多くの利を求めるだけであるが、正道外道問わず道筋を吟味した上で判断出来るモノ達が、居る。
七乃のように、一国を回す程の手腕があれば良かった。利潤を生みだし続ける才があれば良かった。しかし美羽には……それが無い。
美しいだけのお飾り太守。わがままも多いが扱いやすいお人形。邪な部下にとっては、この上なく甘い蜜を吸いやすい存在。
蝶よ花よと育ててきた七乃や限られた忠臣達だけが宝として今も扱っているだけであるのだから、美羽の未来は臣下達が名誉挽回しない限り暗くなる。その合間にどんな扱いを受けるかと考えれば……七乃が袁家に従わないのも当然であった。
七乃はまだ答えを返さず、ニコニコと笑み続けていた。
雛里の警戒が一つ高まる。この目の前の女には、決して気を許してはいけない、と。
「ふふっ♪ どちらにしろ姫様の居場所は無いですよねぇ?」
続きを語る前に、七乃が差し込む。
何処に、とは言わずとも理解出来た。
離反、裏切りの類は確かに出来る。しかし曹操軍にも美羽の居場所は無い。
徐州を攻めたのは自分達だから、頸を刎ねなければもう収まらないのだろう? そう、言い含めていた。
駆け引きの一手は鋭く、探りを入れても居る。笑顔の裏側を覗き込めて、ぞわり、と雛里の背中に寒気が走った。
――やっぱりこの人は頭がいい。使い方が一人の為だけだから分かりにくいけど、袁
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ