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乱世の確率事象改変
籠の鳥は羽ばたけず、鳳は羽ばたくも休まらず
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を気にせずに七乃と話したい事があるからで間違いない。

「手紙、読んで頂けましたか?」

 極寒の冬を思わせる冷気を纏った瞳で、今度は雛里が問いかけた。
 その内容を思い出して、七乃の心にはじわりと憎しみが溢れ出すも表情は崩さず、せめてもの意趣返しとしてニコニコと見つめるだけに留める。
 送られた手紙にはこう書いてあった。

『鳥は片翼では飛べず、千切れた羽は日輪の業火に焼かれるであろう』

 時間と場所の指定はその言葉の後に付いていた。
 七乃は自分からは話してやらない。そちらが誘ったのだから何がしたいのか先に話せ、と笑みだけで促していた。

「……袁術さん、何処に居られるんでしょうか。行方不明との噂が立っているようですが」

 既にこの街でも美羽の行方不明は噂にはなっている。自分だけ逃げたのか、と悪意溢れるカタチで、この街の民がそこかしこで話込んでいる。
 白々しい……と感じながらも、七乃は悲壮に顔を歪ませてみせた。

「姫様の行方は未だ判明していません……私も全力で捜索していますが、何分この地は荒れてしまっていて……思う様に手が回らなくて」
「そうですか……それは“お気の毒に”」
「……」

 咄嗟に、激発しそうになった心を、七乃はどうにか抑え込んだ。

――焦ったら負け。どの程度知られてるかを見極めなければ、姫様の命を繋ぐ事は出来ないんですから。

 ばれている訳がない、何より……こちらは全て独断で行ったのだから、外部にいながらこんな異質な一手を読み取られるはずもない……七乃の心はそんなところ。
 じっと見つめてくる翡翠の瞳には、じわりと昏い輝きが宿っていた。

「では、話を変えて……本題に入りますね」

 急な話題転換が何を以ってかは七乃も分かっている。
 美羽の居所を思い起こさせて、事前に脅し掛けているのだ。自分たちは全く知らない振りをしながら。腹の探り合いは数多の駆け引きを混ぜ込まなければ意味がない。

「かの徐州大乱に於いて、あなた方は我が軍と孫策軍に敗北、逃走。そのまま幽州に駐屯し、袁術さんと共に内部の制圧に重点を置いていたと思います。
 ただ、袁家の手段は聞いてますよ……袁術さんを人質に取られそうになっているのではないですか? そしてそのカタチだけの人質がどういったモノかを、あなたも理解しているかと」

 つらつらと説明を並べ立てられ、七乃は自嘲の笑いを零しそうになった。

 自分も与して孫家に強いた人質の策は、今の七乃にも同じように上の命によって下された。
 ただ、美羽の場合は孫家の時とは話が違う。
 既に敗北した名家の跡取りに……なんの価値があろうか。
 麗羽が負けた場合、本来なら次の後継として最有力であったが、負けてしまえば次の相続者になどなれるわけ
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