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無欠の刃
下忍編
おぞましい
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 ちょうど、多由也がいたその場所から、両腕がにゅるりと飛び出した。伸ばされた腕はぎりぎりのところで彼女の足を掴み切れず、舌打ちと共に、少年が木の中から現れる。

 「ちっ、さけてんじゃねぇよ!」

 予想外の敵の動きに動揺し、固まったカトナの耳は、その声をとらえきれない。が、なんとなくというか、長年の経験ゆえか。こんな時に現れるだろう人物を予測し、無意識の内に体から力が抜ける。思わず、傍の木につこうとした手が無造作に握られる。

 「心配させんなよ、馬鹿が」

 その声を聞きとれず、カトナは首をかしげたあと、たずねる。

 「サスケ、何でここに? 三人、に、襲われてたんじゃ」

 その声はいつもよりも小さかったが、敵に聞かれたくないようだと勘違いしたらしいサスケは、頭をかいて、同じくカトナに倣うようになるべくひそめた声で言う。

 「なんか、全身翠タイツ野郎が今、サクラと一緒に戦っているから、様子をみにきた」

 助けに来たと、手伝いに来たと言わないあたりが、カトナとサスケの関係を如実に表しているだろう。お互いが対等で、お互いの実力を疑わない。そういう、絶対的な関係。
 カトナはきょとんとした顔でその人物を見て、困ったように頬を指でかいた。それは声が聞こえないことにたするごまかしなのだが、まったくと呆れたようにサスケは笑う。

 「どう見ても、彼奴はほかの下忍と比べ物になんねぇ癖に、一人で引き受けてんじゃねぇよ、馬鹿」

 必死に口を凝視し、なんとか、ある程度の単語を読み取ったカトナは、きょとりと目を動かした。サスケが相手の実力を、自分よりも正確にはかれているとは思わなかった。予想外だと言わんばかりのその表情に、むかついたように眉間にしわを寄せつつ、サスケはカトナの頭をはたいた。

「後でサクラの説教だぞ」
「…はい」

 何を言っているかわからないままだが空気を呼んで、そう返事をし、カトナは女を睨み付ける。
 二対一。しかも、片方は幻覚を無効化する写輪眼をもっている。どう考えても自分は不利だと気が付いた多由也は、ばっ、と勢いよく自分の足元にあった木の枝を蹴飛ばすと同時に、一目散にあさっての方向へと走り出す。
 待て! と追いかけに行こうとしたサスケの肩を慌てて、カトナが掴み、声を荒げる。

「相手、サスケ狙ってる! 飛んで火にいる、夏の蟲!!」
「だからって、放っておくのか!! お前を狙った相手だぞ!!」

 カトナは聞こえないため…と言うか聞こえていたとしても一切その言葉の意味が分からず、思わずといった様子で、自分の本心のまま怒鳴りつけた。

 「サスケのが大事!!」

 その言葉に、サスケの頭が一瞬思考を停止させる。カトナは自分の放った台詞が聞こえていないため、自分が何を言い放っ
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