影とカゲ
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翌日の火曜日。
赤髪を揺らし、いつも通りに登校してきた火神は、何事も無く自分の席に着く。
そして、いつも通りに本を読んでいるであろう、水色の影薄い少年。……自分の相棒に声を掛けるべく、上半身だけを振り向かせて
「よう。おはよう、黒子??????」
と、声を掛けるが、後ろの席には誰も居ないのだ。
姿の見えない相棒に火神は怪訝そうに首を傾げる。
いつもなら、この時間にはとっくに居るはずの黒子が居なく、ましては真面目な黒子が席に着いていないことに少し驚きながらも、火神は(そのうち来るだろう…)とそこまで気にしなかった。
しかし、HRの予冷が鳴ろうとも黒子は姿を見せず、先生は何時もの様に黒子を忘れてHRを終了させた。
毎度毎度のことで、影の薄さに時たまうんざりとする火神だったが、そんなことを今、気にしている場合ではないのだ。
HRを終えてひと段落しながら教室を出て行く先生を追いかけた。
火神は黒子のことを聞こうと先生を呼び止め、口を開く。
「…なぁ!黒子は休みなのか?…ぁ…です。」
先生は「はて?」と訳が分からないと言いたげな顔をして、ペラペラと出席簿を開く
「黒子?居らんかったか?休みの連絡は来てないが…」
「…そっすか」
そう返してきた先生の答えに落胆しながら火神は頷く。
…休みじゃないのに居ない黒子。
どこに居ても影が薄い黒子なので、授業中でも堂々と居眠りをする黒子ではあるが、サボったりしたことは彼が知る限りでは無い。
…なら、黒子はどこにいるのだろうか?
「……俺にも分からなくなっちまったとか…?」
そう呟きつつも、つーっと何故か出てくる冷や汗を拭き、笑う。
そんなことがあっては、バスケに支障が出るどころの騒ぎではない。そんなことがあれば、真っ先にリコか日向。そして、相棒である火神のところへと電話をしているはずだ。
もしかしたら休みの連絡を売れ忘れたとか、具合が悪くてトイレに籠っているとか、まだそのほうが可能性はある。
「トイレ……、トイレ行ってみるか」
自分が言いだしたことに「もしかしたら」と思い、そして、考えたら行きたくなってしまったので、火神はHR後の慌ただしい廊下を歩いて行く。
すると、
「??………君、……………み君」
そんな自分を呼んでいるのかまでは分からないが、小さな声が生徒の騒ぎの中から聞こえた気がした。
「……ん?」
ピタリと足を止めて辺りを見渡してみるが、誰も火神に声をかけてきた様子も、これから掛けようとする人はいない。
(…聞き間違えか)
そう処理した火神は、トイレへと足を進めた。
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