第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
五十話 ヨルノハジマリ
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るな」
頭を下げる静芽に武瑠は笑いながらそう声をかけるが、次の瞬間には表情を引き締めながら、
「私を持ち上げてくれるのは嬉しいが――――敵を侮るなよ。自身は過信に、そして慢心に変わるものだ。その慢心から生まれる驕りは自身及び味方を殺すぞ。敵を侮るという行為は軍を預かる軍神にとっては致命的だ、忘れるなよ」
「……はい、今回の発言を猛省し熊襲の軍神として精進して参ります」
消沈し力無く頭を下げたままそんな言葉を口にする静芽の頭を武瑠は軽く撫でると、
「明日は軽く大和の軍と一戦交えるぞ、今日はもう休め」
「……了解致しました」
武留の言葉に静芽は素直に従い熊襲の陣へと戻っていく。その後を追うように武瑠も歩を進めるがふと頭上を仰ぎ、
「さて此度の戦……どう戦況は転ぶかな」
そんな彼の呟きは夜の闇に溶けるように消えていった。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
雲一つ無い晴天の下――――広大な平原で大和と熊襲の軍勢が一進一退の攻防を繰り広げ怒号を発し気勢を上げている。
小高い丘陵に敷いた大和の陣から、神奈子は一人戦場を遠目に見つめ思案に耽っていた。そんな彼女に天幕から顔を出した須佐之男が声をかける。
「どうしたんだよ神奈子?難しい顔なんかして?」
「……須佐之男、妙だとは思わないかい?」
神奈子は戦場から視線を外すことなく須佐之男にそう問いかけ、問われた須佐之男は顎に手をやり数秒思案した後、
「……熊襲の連中が軍を強行させてきた割に攻撃が散漫だって事か?」
「そうだよ、強行した割には悠々と陣を構えて攻撃も一当てしたらすぐに引いていく――――まるで時間稼ぎみたいに」
神奈子の言葉通り熊襲の軍は本格的な攻勢をかける事も無く散発的に攻撃してくるだけ。しかも大和が仕掛けてくれば防衛に徹し戦線をあっさり下げてしまう。
「時間稼ぎね……だったらこっちから一気に仕掛けようぜ!何を企んでいるかわ知らねーがぶっ潰せば一緒だろ!」
実に須佐之男らしい意見であり単純な戦略で言えば妥当な判断でもある。慎重になりすぎて敵の策を完成させていまえば元も子も無い。
「アンタらしいし有効な判断だけど――――残念ながらその手は打ちたくないね」
神奈子は苦笑いを浮かべながら須佐之男の意見に反対の意を示す。それに須佐之男は、
「何でだよ!」
「……じゃぁ聞くけど、熊襲の軍が後退したらあんたどうするつもりだい?」
文句を言った須佐之男に神奈子は真剣な表情でそんな問いかけをしてくる。
「?そんなの追撃するに決まってんじゃねーか?」
「だろうね……五十年前にあたしがそれ
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