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三個のオレンジ
第二章
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第二章

「旅行にね。その時にね」
「その時になの」
「そうだよ、行こうよ」
 また言うのだった。
「イタリアにね」
「それでオレンジをなのね」
「またオレンジなんだ」
「だから。新鮮なオレンジよ」
 それを切望しているかの様だった。そのうえでの言葉だった。
「それを是非ね」
「オレンジ以外にも色々とある国だけれどね」
「まあね。パスタにトマトにアボガドに」
 どれもイタリアの象徴だ。寒いロシアにとってはイタリアはまさに憧れである。そしてその料理や食べ物もだ。その青い空の象徴にもなっているのだ。
「それに生ハムにチーズにね」
「何でもあるじゃない」
「けれどやっぱりオレンジよ」
 ソーニャはそれは外せないというのである。イワノフはその彼女を言葉を聞いてふと思った。だがそれは今は言わないのだった。
「オレンジが食べたいのよ」
「わかったよ。それじゃあね」
「オレンジね」
「お金丁度貯まってるし」
「私もよ」
 旅に必要なのはまずは金である。だが二人共それはあるというのだ。ロシアはまた力をつけてきている。それで彼等もそれだけの豊かさを身に着けてきているのだ。
 そしてだ。さらに話すのだった。
「それじゃあ」
「後は時間を見つけてね」
 そのうえで行くことにしたのだった。そのイタリアにだ。まずはローマに着いた。二人はそこで最初に驚いたことはというとだ。
「うわ、暑いな」
「というかこんなに暑い場所ってあったの」
 ローマに着いてすぐにその暑さに驚いたのである。何しろモスクワから飛行機ですぐに来たのだ。モスクワの寒さとは全く違っていた。
 最初にその暑さを感じて驚いた。しかし決してまとわりつくものではなかった。
 あっさりとしているのだ。その暑さがだ。さらりとした感じである。そしてだ。
 空港から出るとだ。その上にあったものはその青い空だった。晴れやかな青空が広がっている。そこにある白い雲も見事な白だ。
 二人はその青と白を見てだ。あらためて驚いて言ったのである。
「ねえ」
「そうだね」
 イワノフは空を見上げたままソーニャの言葉に頷く。彼女も空を見上げている。
「こんな奇麗な青空ははじめて見たよ」
「ええ。イタリア人はいつもこんなに青い空を見ているのね」
「親父が昔言っていたけれど」
 イワノフは今度は自分の父の話をした。
「キューバってさ」
「キューバね」
「あの国も凄く奇麗な青い空でね」
 かつて、ソ連の時代はキューバへの観光旅行は最高のプレゼントだったのだ。その極寒のロシアにとって常夏のキューバはまさに楽園なのだ。
「それで海も宝石みたいでね」
「そんな国なの」
「今度お金ができたらキューバに行く?」
「難しいけれどね。あそこまで行くお金を貯めるのは」

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