閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
71.霜の巨人
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直すまでの時間はどの組み合わせを用いてもモンスターの方が早いことがわかった。
これは賭けの奥義でしかない。一人では成立しない諸刃の剣だ。
「シュウくん、大丈夫!」
動けなくなった俺の横に心配そうにリーファが駆け寄ってくる。
「ああ、ディレイで動けぇだけだから問題ねぇ。それよりもキリトは何してんだ?」
「お兄ちゃんなら今、フレイヤさんの宝物を探してる」
それがこのクエストを攻略する方法なのだろうか。そういえば俺もどこかでこの話を読んだ気がする。
思い出そうとする俺の脳に不穏な低い声が響いた。
「…………ぎる…………」
ぱりっ、と空中に細いスパークが瞬いた気がした。
「……なぎる……みなぎるぞ…………」
とてつもない嫌な予感に俺とリーファはフレイヤの方を見た。
ぱりぱりっ、というスパークが激しくなっていく。ゴールデンブラウンの髪がふわりと浮び上がり、純白の薄いドレスに裾が勢いよく翻る。
「みな……ぎるうぅぅぉぉおおオオオオオ─────!」
その姿には呆然するしかなかった。先ほどまで美しい姿だったフレイヤがみるみる巨大化していく。三メートル……五メートル……まだまだ止まらない。腕や脚は最早大木のようにたくましく胸板はスリュムをも上回るほどだった。右手に握られた金槌もまた、持ち主に合わせて巨大化している。あっという間にスリュムと変わらないほどの姿に変わった。
そこで俺たちをさらに驚愕させる現象が。特にクラインに。
俯けられたままの顔の、ごつごつと頬と顎から、ばさりと金褐色の長い、おヒゲが。
「オッ……」
「オッ……」
「オッサンじゃん!」
部屋の端と中央で男性陣の絶叫が響いた。
「オオオ……オオオオオ────ッ!」
巨大なおっさんは、広間中をびりびりと震わせる重低音の咆哮を放つと、体勢を立て直したスリュムに向けていつの間にか分厚い革のブーツで包まれた右脚をずしりと踏み出した。
俺は呆然とする中で、視線を視界の左端、九個並ぶHPMPゲージの一番下の名前を確かめる。
そこには先ほどまで【Freyja】と記されていた文字列は、いつの間にか変化していた。
【Thor】。北欧神話の雷神───それが新しい我らのお仲間だった。
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