閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
71.霜の巨人
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うと、リーファが風魔法の詠唱を始める。
しかし間に合うはずがない。
「リーファ、みんな、防御姿勢!」
キリトの声に、リーファがスペルを中断して両腕を体の前でクロスし、身をかがめた。全員が同じ姿勢を取った、その瞬間。
スリュムの口から、これまでの直線ブレスとは異なる、広範囲に膨らむダイヤモンドダストが放たれる。
青白く光る風が俺たちを包む。アスナがかけたバフすらも貫通するほどの冷気が肌を刺す。一瞬のうちに五人のアバターを凍結させる。俺、キリト、リーファ、クライン、リズ、そしてピナを腕の中にしっかりと包み込んだシリカまでもが、青い氷の彫像と化す。
この段階ではまだHPは減っていない。しかしこれは大技のための布石でしかない。
これを受けたらまずいと確信した俺が叫んだ。
「シノン! 俺に向かって矢を放て!!」
凍結のせいで後方すら見えないが、かなり動揺していることだろう。しかし後方から飛来した矢が俺の身体を貫く。ついでに爆発するというオプション付きだった。両手長弓系ソードスキル《エクスプロード・アロー》だ。物理一割、火炎九割の属性攻撃だ。
ここまで求めていない、と心の中で叫びながら俺は爆発の勢いを利用し前へと飛び出る。
「ぬうぅぅーん!」
太い雄叫びとともに、スリュムは巨大な右脚を持ち上げた。
「させっかよ───ッ!!」
左手を前へと突き出し、右手で握りしめた槍を身体を捻らせて後方へと引き絞る。そして左脚で床を力強く踏み込むと同時に引き絞られた槍をスリュムの身体目掛けて投げた。槍投撃技《レイヴァテイン》が空を切り裂く。
紅蓮をまとった神殺しの槍が霜の巨人の王の強靭な胸へと突き刺さった。
「むぬうぅん!」
スリュムのタゲが前衛から俺単体へと変わった。
「みんなは体制を立て直せ! シノンとアスナは俺の援護を頼む!」
あからさまに怒っているスリュムを一人で相手するのは至難の技ではあるが、体制を立て直すまでの時間を稼ぐぐらいなら前衛一人でもできないことはない。
「来いよな、このデカブツ!」
落下してきた《ロンギヌスの槍》をキャッチし、スリュムを睨みつける。攻撃モーションは見る限り、増えたのは先ほどの広範囲に攻撃くらいのようだ。それならば攻撃のチャンスなどいくらでもある。
霧の巨人の猛攻を躱し続ける中で俺の身体を柔らかな水色の光が降り注いだ。アスナの高位全体回復スペルだ。
このゲームの大型回復呪文は、その大部分が《時間継続回復》、すなわち《何秒で何ポイント回復する》というタイプなのだ。即座に回復できるというわけではない。だからこそ、回復中に攻撃を受ければ、死はありえる。
HPを全回したことで俺は少しだけ余裕ができたせいか一つの無謀が浮か
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