閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
71.霜の巨人
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か、どこか聞いたことのあるようなないような名前だ。
俺はリーファの胸に下がるメダリオンを一瞥した。宝玉はいよいよ九割以上が黒色に染まっていた。残り時間はわずかということだ。
「キリト、先を急ぐぞ。もう時間がねぇみてぇだから」
「ああ、わかった」
大きく息を吸い込み、キリトが口を開く。
「ダンジョンの構造からして、あの階段を下りたら多分すぐにラスボスの部屋だ。いままでのボスよりさらに強いだろうど、あとはもう小細工抜きでぶつかってみるしかない。序盤は、攻撃パターンを掴めるまで防御主体、反撃のタイミングは指示する。ボスのゲージが黄色くなるとこと赤くなることでパターンが変わるだろうが注意してくれ」
こくりと頷く仲間の顔を見渡し、キリトが語気を強めて叫んだ。
「───ラストバトル、全開でぶっ飛ばそうぜ!」
「おー!」
仲間たちの声がフィールド内に響き渡った。
下りの階段を降りた突き当たり、二匹の狼が彫り込まれた分厚い氷の扉がたちはだかった。ここが、《霜の巨人の王》がいるであろう場所だとは誰でも言わずともわかるであろう。
扉が俺たちが五メートル以内に踏み込むと自動的に左右に開いた。奥から嫌な冷気の圧力が吹き寄せてくる。アスナが全員に支援魔法を張り直しをすると、フレイヤも全員のHPを大幅にブーストする未知のバフを掛けてくれた。
息を一旦整える。全員にアイコンタクト。頷きを交わし、一気に駆け込んだ。
内部は、途轍もなく巨大な空間が広がっていた。壁や床はこれまでと同じ氷。同じく氷の燭台に、青紫色の炎が不気味に揺れる。遥か高い天井にも同色のシャンデリラが並ぶ。しかしそれよりも俺たちの眼は、左右の壁際から奥へと連なる、無数の黄金へと奪われた。
金貨や装飾品、剣、鎧、盾、彫像から家具までありとあらゆる黄金製のオブジェクトが数え切れぬくらいにそこにはあった。
「…………総額、何ユルドだろ……」
この中でリズベットが呆然と呟いた。
本気で一瞬計算しようとした自分を抑えこんでから神経を研ぎ澄ました。
「……小虫が飛んでおる」
広間奥の暗がりから、地面が震えるような重低音の呟きが聞こえた。
「ずいぶん煩わしい羽音が聞こえるぞ。どれ、悪さをする前に、ひとつ潰してくれようか」
床が震える。近づいてくるとその震動は、今にも氷の床を砕いてしまいそうな重々しさだ。
やがて、灯りが照らし出したのは、巨大な人影だった。
巨大などという一言で片付けられるレベルではない。今まで戦ってきた邪神ボスの倍以上のでかさ。
肌の色は、鉛のような鈍い青。脚と腕には、いったいどれほど大きい獣から剥いだのか、黒褐色の毛皮を巻きつけている。腰回りには、パーツひとつがちょっとした小舟ほどありそうな
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