月の通り道2
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由を感じないように。
誰にも言わずにいた、自分の底の方でくすぶっていた思いを、優は口から零れるままに言葉にしていた。こんなことを誰かに言うつもりはなかったが、今はなんだかどうでも良かった。
「だから羨ましいよ。深江みたいに、自由な人が」
「え、自由かな。違反ばっかりで、いつも怒られているだけだよ」
優の発言とその意味について行けない菜雪は、ただ困ったように眉を下げる。
「俺からすればね。『規則を守るか破るか』という選択肢が存在する分、自由に見えるんだ」
「ふうん……、そんなものですか」
彼女は腑に落ちたような、落ちていないような、ぼんやりとした返答をした。
恐らく、菜雪は自分が言ったことを理解していないだろうということを知りながら、優はこれ以上話をするのをやめた。別に分かってもらおうとしてした話ではない。
「そんなものですよ。まあ、隣の芝生は青いくらいの話だと思ってください」
「……はあ」
菜雪も何を言っていいのか分からなくなったのだろう、すっかり黙ってしまい、二人は並んで空を見上げた。
その沈黙を破ったのも、菜雪の「あ!」という叫びだった。
「そろそろ戻らないとまずいかな」
優は手に付けている腕時計を見る。ここに来てから、大体十五分が経過していた。
「ここにいること自体がまずいんだけどね、本来は」
優のぼやきに対して、菜雪は苦笑する。
「まあ、ね。そういえば峠も無断外出なんでしょ、大丈夫なの?」
彼は立ち上がると、ジャージやTシャツについた草を払った。
「俺は大丈夫だよ。いざとなったら脱走者を探していましたって言えば、無罪放免だから」
「先生の追求はそんなものでは済まないよ」
「済むよ。普段の素行が良ければね、時々嘘をついてごまかしたって、ばれないんだ。これはこれで便利だよ」
そう何でもないように言ってのける優に、菜雪は信じられないと言わんばかりに目を見開いた。その反応の意味が取れなかった彼が「今度は何?」と聞くと同時に、菜雪は盛大に吹き出して、また彼の肩を乱暴に叩いた。
「だから、いたっ……」
菜雪に抗議しようとする優の声を遮って、笑顔のまま言う。
「何だかんだ峠も好きなようにやってるじゃない。沈んだ顔してたから、どうしようかと思ってたのに」
菜雪は良かった良かったと勝手に納得しながら優の前を歩き出した。
「……はあ」
優は菜雪の気分の変化について行けず、叩かれた箇所を押さえてその場に突っ立っていた。
好きなように、とは、自由に、というつもりだろうか。
論点がずれている、と優は思った。自分は彼女の方が規則に縛られない行動の幅を持っている分「自由」だ、と称したのだけれど。
それを指摘した方が良いのか迷っている間に、菜雪がくるっと振り返った。
「でもやっぱり
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