暁 〜小説投稿サイト〜
クルスニク・オーケストラ
第七楽章 コープス・ホープ
7-1小節
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嬢さんの誕生日でしょう? もう休暇申請は出しました?」
「はい。今月の頭に。お気遣いありがとうございます、ジゼル補佐」
「いいえ。お節介でごめんなさいね。少し早いけど、《娘さんの誕生日、おめでとうございます》」

 キャロライナの笑顔は幸せをくるんだマシュマロのよう。《まさに母親って感じ》ですね。《思わずこっちがお母さんって言って抱きつきたくなるや》。
 こんな仕事だから、せめてプライベートで楽しみを見出してくれるとわたくしも安心します。


「あの……ジゼル補佐。よろしいですか」

 あらまあ。自分のデスクを片付ける間もありませんわね。もっとも作業が何だったか忘れてしまったからちょうどいいですわ。
 急いで自卓のPCをスリープに。体ごとふり返ってまっすぐ向き合ってあげる。

 レディエージェントが一人。Bチームのリリ。
 ――真面目な相談事のニオイがしますわ。しかも女性特有の相談事。

「この場で話します? わたくしはどこでも構いませんわよ」
「それじゃ、外のホール……いい、ですか?」

 《リリちゃんの恥じらい方可愛すぎ! 正義!》 《うるさいわよ、音楽バカ》

 わたくしの脳内では貴方がたのほうが煩そうございますわよ。《レノン》、《モニカ》。

「分かりました。――カール」

 現時点でトップクラスの業績を上げている(次のクラウンは彼だともっぱらの噂の)部下に呼びかける。いてくれてよかったわ。

「わたくしは少し席を外します。有事の際は外のホールにいますので、遠慮なく声をかけてちょうだい。トラブルがあっても、無理して一人で解決しようとしてはいけませんよ」

 カールが了解を返してから、わたくしはリリを連れて対策室を出ました。
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