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FAIRY TAIL 星と影と……(凍結)
EP.29 ジョゼの研究
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ッ!」

 崩れた壁から差し込む陽光が作る自分の影が、光が雲に遮られた事によって揺らめくように明暗をつける。
 ワタルには、それが自分の精神に住まう大鹿を象った怨念、中務(なかつかさ)が自分を嘲笑ったかのように思えてならなかった。

 一切の迷いとしがらみを捨てる覚悟で臨まなければ、『力』の制御などできるものではない。御する事ができずに飲みこまれてしまえば、敵味方の見境なしに力尽きるまで暴れ続ける戦闘マシーンへと身を落とす事になる。

「(一体、どうすれば……)」

 だが……事態は決して、彼の逡巡を待ってはくれない。

「黙れェェェェェェッ!!」
「!? よせ、エルザ! 今の奴に迂闊に飛び込むな!」
「おっと……何をお怒りで、妖精女王(ティターニア)?」

 ジョゼの言葉に堪忍袋の緒が切れたのか、エルザは吶喊を敢行。狂人の戯言にいちいち耳を傾けていては身が持たないと、半分聞き流しながら分析・逡巡に没頭していたワタルは反応が遅れ、それを許してしまう。

『情に厚い、どちらかといえば頑固で直情的な彼女が、一度の制止で止まる筈がなかった』

 そう己の迂闊さを呪っている彼をよそに、ジョゼは彼女が激情と共に振り下ろした剣を指に込めた魔力で難なく受け止める。
 別に躱しても良かったと言わんばかりに、小馬鹿にしたように尋ねるジョゼははっきりと侮蔑を表に出しており、彼女は憤怒の色をさらに濃くした。

「貴様が……」
「あぁ?」

 まるで大樹に切り付けているかのように微動だにしないジョゼに怯まず、エルザは怒りの言葉を吐き出す。

「私の前でルーシィを、アイツを…………私の大事な仲間を語るな!! 戦争の引き金、ハートフィリアの娘だと? 花が咲く場所を選べないように、子供だって親を選べない。貴様に涙を流すルーシィの何が分かる!」

 怒りで赤く染まった思考で、エルザはこれ以上無い程に強く歯を食いしばりながら、非力を蔑むようにニタリと嗤っているジョゼに対して憤怒を強めるとともに、これまでの戦いで消費して残り僅かとなってしまったなけなしの魔力を惜しまずに剣へと行き渡らせる。
 家出したルーシィが大企業である実家の財産を使える訳も無いと、幽鬼の支配者(ファントムロード)の、ひいてはジョゼの情報収集能力を指摘して嗤ってやる余裕は、怒りに塗りつぶされたエルザの心には存在しなかった。

 それは目の前で嗤うこの男が、自分の前で一面だけを見て彼を侮辱したからだ。

 狂気という深い闇に堕ちた仲間を元に戻せなかった無力感と結果的に大勢の仲間を置いて行ってしまった罪悪感に苛まれていた自分は当時、頼んでいないにもかかわらず助けてくれた彼を信じきれず、猜疑心を向けていた。意外と繊細で心の機微に聡い彼の事だ、その事に気付いて
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