EP.29 ジョゼの研究
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妖精の尻尾はこの上なく目障りなのだよ! 小うるさい羽音を立てて、幽鬼の縄張りに踏み入った事を後悔しながら地獄に行くがいい!!」
熱に浮かされたかのように、ジョゼ不気味な笑みをこぼしながら己の野望を語る。
歓喜、憎悪、嫉妬――ころころと変わる感情を制御できていないジョゼのその様は正気を激しく逸脱していると判別するのに十分であり、ワタルには彼が狂気に侵されているのがはっきりと分かった。
「だが安心しなさい。ハートフィリアの娘はもちろん、『星族』も殺しはしない。娘は財閥から金が搾り取れなくなるまで飼い殺しに、その小僧には貴重なサンプルとして私の糧になってもらうのだからな! 『星族』の末裔が消えて喜ぶ者など、この世に腐るほどいる! 生きる価値も無い疫病神にはもったいない程だ!!」
= = =
「(まるで正気ではない……しかしマズイな)」
並外れた魔力を振り撒いて何かに取りつかれたかのように語り続けるジョゼの様子を、ワタルは息を整えながら観察すると共に分析し、その結果に眉を顰めた。
普段の理知的な姿をかなぐり捨てて、感情をむき出しにした彼の様子は明らかに常軌を逸している。
だが、ジョゼの怖いところは、そんな精神に理性を共生させているところだ。
それはもちろん、落ち着いた様子を見せている、という訳では無い。
どんなに激しく感情を表に出そうとも、『頂点に立つ』という目的を見失っていない、という事だ。
これから行われるのは、もはや先程までの退屈凌ぎと抵抗を続ける者たちへの見せしめとして、自分の力を誇示するためのお遊戯などではなく、食うか食われるかの闘争だろう。
そのお遊戯ですら、自分たちはジョゼに歯が立っていない――その事実に、ワタルが危機感を覚えるのも当然と言える。
「(手が無い訳じゃない。でも――――)」
『もう二度と、あんな真っ黒な感情で塗りつぶされたお前は見たくない』
ワタルの脳裏によみがえるのはエルザの泣きそうな顔と震えた言葉。
しかし、原因は不明だが『退魔の光』の使用時の消耗が尋常ではない今、ジョゼを打倒するにはどうしたって『もう一つの力』を解放しなくてはならない。
「(狂気を走らせ解き放つ……いや、奴と同じことをするだけでは届かない。なら制御……否、支配する事によって奴の先を行く――――俺にできるのか、そんな事……?)」
一度身をやつして、制御できずに飲み込まれた狂気という『力』に身を投じる。
遊びを捨てて攻めてくるであろうジョゼに打ち勝ち、ギルドと仲間を守るにはそれ以外に選択肢などないのだが……皮肉にも、共に在りたいと願った彼女の言葉がワタルを躊躇わせていた。
「(くそ……じゃあ……)……
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