EP.29 ジョゼの研究
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を切り、表情を歓喜の笑みから一変させた。
「ここ数年で、急激に力をつけてきたギルドがある……そう、貴様等妖精の尻尾だ。元々弱小ギルドだったくせに、我が幽鬼の支配者と並んでこの国を代表するほどに貴様等は大きくなった!」
忌々しいことこの上ないと、狂喜から一変、黒く濁った憎悪の魔力を迸らせながらジョゼは語る。
「この戦争は、そのくだらん妬みが引き起こしたとでも……!?」
「妬み? 違うな。我々は優劣をハッキリさせたいのだよ。我々が頂点なのだと証明するためにね……!」
別に妖精の尻尾はフィオーレ一の座にこだわっている訳でも、目指している訳でもない。
他人の評価など気にせず自由気ままに歩んでいる彼らにとって、ジョゼの言い分は一方的な言いがかりに過ぎないのだ。
そんな怒りから、エルザは剣先を向けるが、ジョゼは鼻で笑うように受け流す。
「戦争の引き金は些細な事だった。家出した娘を連れ戻して欲しい――ハートフィリア財閥からそんな依頼が舞い込んできたのさ。調べて驚いたよ……その娘は妖精の尻尾に居たのだからな」
憎悪の色を強めるジョゼは醜悪な魔力を垂れ流す。その膨大さも相まり、触れるだけで気力が萎えるような瘴気すら感じたワタルは顔を歪めた。
苦しげに息を吐く彼を見て溜飲を下げたのか、ジョゼは嗜虐的な笑みを浮かべて続ける。
「話は変わりますが、私はある存在について調べていた……そう、貴様等『星族』だ。聖十大魔道の特権を使って閲覧した文献には、あのゼレフにと同列に記されていたよ」
「ゼレフだと……!?」
「……かの有名な、史上最悪の黒魔導士と並べられていたとは知らなかったな。『星族』も偉くなったもんだ」
ゼレフ――因縁深い名に驚愕の表情を浮かべるエルザ。彼女とは対照的に、ワタルは無感情にではあるが、どこか自嘲を含めて吐き捨てた。
そんな二人が目に入っていないかのようにジョゼは言葉を続ける。
「魔法評議院にそこまで恐れられる存在を私は独自に調査していた。が、直接的な情報が載せられたと思われる資料にはどれも検閲が入っていたため調査は難航を極めたよ。それでも、膨大な時間と労力を費やして……私は『星族』の片鱗を掴むことに成功したのだ!」
砂漠の中からダイヤモンドを見つけるが如き苦行だったが、解明されていく事は驚く事ばかりだったと、ジョゼは子供のように興奮を隠そうともしないで語る。
400年もの昔、このイシュガル大陸の最東端に位置する国でその名を轟かせ、栄華を極めていた事。
誰よりも魔法と魔力、そしてエーテルナノに精通しており、ひとたび魔法に触れば根本から滅し、魔導士の身体に触れば一瞬で再起不能になるまでにその肉体を壊す事ができた事。
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