第五話:笑う棺桶
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場に通って剣道の鍛錬をしていた時の夢だ。
それなりの期間剣道に打ち込んできたわけだから、必然的にオレの力は上がっていった。全盛期では大人にも引けを取らなかったくらいだ。
しかしオレに自慢できるのは剣道しかなくて、剣道こそがオレの生き甲斐だった。
けど、それでも勝てない奴がいた。どれだけ打ち込んでも、いなされ、返し技で決められる。奴はいつもオレに先手を取らせて動く。まるで、お前の技など取るに足らないとでも言うように。
初めて負けた時、オレはまるで自分を否定されたかのような衝撃を受けたのを鮮明に覚えている。なにせ生き甲斐、文字通り人生を懸けてきたのだ。それを軽くあしらわれてしまったのだ。
だから、オレは奴に勝つ為に闇雲に鍛錬を行った。自身の疲労を顧みず、怪我を押し殺して剣を振り続けた結果。
オレは二度と剣を振るえなくなってしまった。
そんな時だったのだ。ソードアート・オンラインの発売が決定されたのは。ゲーム世界ならばまた剣を振ることができる。嬉々としてオレはこのゲームを購入し、そして、この地獄に取り込まれた。
この世界に来て、多くの絶望を味わった。生きて帰れないと確信した。しかし元より、オレは現実での生活に未練などない。故に、最後まで剣を振るっていられるこの世界に骨を埋める覚悟さえあった。
だが今になってそれはできなくなった。約束したのだ、あいつらと。あいつらの分まで生きて、そしてこの鉄城を攻略すると。
ああ、そうだ。オレに残された時間はもう少ない。いずれこの意識は闇に沈むだろう。だからそれまでに、この世界を終わらせる。
「オレが、終わらせる」
† †
いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。目を覚ましたのは最後に記憶のあるNPCレストランの座席。
しかし向かいに座っている人物はオレの記憶とは少々違った。
「あ、起きた」
「……なぜお前がいる?」
黒髪をサイドテールに纏めた少女、プレイヤーネームに《yume》と記された彼女は、オレの問い掛けににっこり笑った。
「アスナから救援要請がありまして」
「……余計なことを」
正直に言って、オレはコイツが苦手だ。昔のままのテンションならある程度まで流せたが、今の状態でそれは無理だ。こいつの何もかもを引っ掻き回して混沌とした空気を作る才能には太刀打ちできない。
オレとしては情報屋である《鼠のアルゴ》並みに苦手な人物だ。
「それでそれで、なんだったのかなー? さっきの寝言は?」
「寝言?」
心底楽しそうに詰め寄るユメを手で抑えてオレは首を傾げた。はて、寝言など言っていたのだろうか。
「『オレが、終わらせる』って言ってたよー? すっごいキメ声で」
「……それがオレの声真似のつもりだとしたら、あまりにも
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