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シスター
第二章
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第二章

「人は。皆同じですよ」
 シスターは優しい声で華子に語り掛けてきた。
「シスターミカエラ」
 華子は彼女を見てこう呼んだ。
「シスターミカエラ」
 修治はそれを聞いてはじめて彼女の名を知った。一度聞くと忘れられない印象的な名前に思えたのはそれだけ彼が彼女のことを思っているからだろう。
「栗脇さん」
 シスターミカエラは華子に応えて言った。
「人間は。誰しも同じですと」
 そしてまた同じことを繰り返してきた。
「皆。ですから心配することはありません」
「そうなんですか?」
「はい。では御聞きしますが貴女は彼のことをどう思っていますか?」
「私ですか?」
「ええ。大事なのは貴女です」
 じっと華子の目を見詰めている。優しいが芯の強い目であった。
「貴女が彼のことをどう思っているかですよ」
「どうって言われましても」
 華子は戸惑っていた。修治はそんな華子とシスターミカエラの間に入る形になっており、そこから二人を見ていた。そしてそこからシスターを観察していた。
 思っていたよりもずっと芯の強い女性であった。可憐な容姿からは想像でできない程強く、凛としたものがあった。目の光も強いものでありその光を一直線に華子に向けて話をしていたのであった。そんな彼女の姿に彼はさらに思うところが出て来た。
 だが今は黙っていた。そして二人を見ていた。華子の戸惑いもシスターの芯も同時に見ていた。
「私は」
「どうなのですか?」
「佐藤君のことが」
 それから先の言葉は修治にもわかった。それを言わせたシスターの強さに思うところがあった。
「好きです」
 華子は言った。
「彼が私のことを想っているのと同じ位好きです、多分」
「そうですか」
 シスターはそれを聞いてにこりと笑った。目から強い光が消え、優しい光になた。まるで太陽から月に変わったかのようであった。
「それでは彼の告白、お受けしますね」
「はい」
 華子は答えた。
「明日、佐藤君に言います。貴方のことが好きだって」
「はい」
 つまり両想いなのである。片方が好きなだけでは適わないこともあるだろう。だが両方ならば。その結果はもう言うまでもないことである。
「彼も私のことが好きなんて。それこそ嘘みたいですけれど」
「いえ、嘘ではありませんよ」
 シスターは月の光の様な優しい声で言った。本来キリスト教では月はあまりいいものとしては考えられてはいないが修治は今彼女を優しい月の様に思えた。夜の中で彷徨う旅人を照らし、導く月の様に。
「これは。本当のことなんですから」
「はい」
 華子は頷いた。
「それじゃあ私からも」
「ええ」
「言います。そして佐藤君の告白、受けます」
「そうです。貴女がそう思われているのならそうなさるべきなのです」

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