第二章
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させて否定した。
「そんなことは。まだまだです」
「いえ、そんな」
修治はそんなことはないと言った。
「シスターは。立派だと思いますよ」
「そうでしょうか」
「今時。そんな立派な教師なんてそうそういませんから」
これは残念ながら本当のことであった。異常な暴力を振るったり、偏狭な思想を押し付けようとする教師は実に多い。我が国の教育の病根の一つである。
「自分さえよければいいと考える奴があまりにも多いですからね」
「そういうものなのですか」
「はい。それにしてもあの二人は」
ふと華子と佐藤に考えを向ける。
「どうなりますかね」
「きっと上手くいきますよ」
シスターは全てを信じた声で返した。
「絶対に。神の導かれるままに」
「神の、ですか」
それでは自分も神様に導かれてこのシスターと一緒になりたいと思ったがそれは口に出すことは出来なかった。まだとても口にすら出せなかった。
「それ程御心配でしたら見に行きませんか?」
「見に、ですか?」
「はい、二人がどうなるか。私も御一緒しますので」
「シスターも」
実はそれに最も心を動かさせられた。華子と佐藤のことよりもシスターと一緒にいられる、そのことの方が彼にとっては重要なことに思われたのである。
「如何でしょうか」
「そうですね」
ここで即答することはしなかった。即答すれば怪しまれると思ったからだ。慎重にいくことにしたのだ。
「シスターさえ宜しければ」
「では行きますか」
シスターはそれを聞いて言った。
「あの二人を見守りに」
「はい、それでは」
内心非常に嬉しかった。図らずもシスターと一緒にいられるからだ。彼は心の中でうきうきとしながらシスターと一緒に教会を出た。そして次の日の放課後大学の教会で待ち合わせた。
「どうも」
「はい」
まずは挨拶を交わした。それから中等部に向かう。
キャンパスを歩きながらあれこれと話をする。自分の横でシスターがいてくれるだけで天にも昇りそうな気持ちになる。しかし今はそれを必死に隠していた。
「あの二人は何処にいるでしょうね」
「そうですね」
シスターは少し考えてから修治の質問に答えた。
「告白が成功しているのならグラウンドですね」
「グラウンド」
「はい、中等部の野球部はいつもそこで練習していますから」
それがシスターの返事であった。
「行きましょう」
「はい」
修治は気分よくグラウンドに向かった。見ればシスターの言う通り中等部の野球部がそこで練習していた。そして観戦用のベンチには華子がいた。そこに座って練習風景を見ている。
「ほら」
シスターはそれを見てから修治に顔を向けた。
「おられますね」
「ええ」
ということは華子は佐藤と交際をはじめたということである。
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