第二章
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シスターの声がさらに優しくなった。そしてそれは華子だけでなく修治の心にも届いていた。
(大事なのは自分が思っているかどうか)
彼はその心の中で呟いた。
(僕が。どう思っているか)
シスターは今確かにこう言った。そしてそれは彼にある決意を促したのであった。
「有り難うございます、シスターミカエラ」
華子は深々と頭を下げて礼を述べた。
「おかげで。決意することができました」
「はい」
(決意)
修治はそれを聞いてまた心の中で呟いた。
(そうだ、決意だ)
呟きながらシスターの方へ顔を向ける。だが彼女はそれには気付いてはいない。
「私、行きます」
「お行きなさい、主の導かれるままに」
「はい!」
最後は強い声になっていた。そしてここに来た時とは全く違う元気な足取りで教会を後にした。そこにはもう迷いは見られず強い決意が感じられた。
こうして華子の相談は終わった。修治が相談を受けた筈だったのに何時の間にかシスターミカエラの言葉で全てが決まってしまっていた。そして彼はこれでこの教会から去ることになる筈だった。
だが彼はとりあえずはそれをしなかった。シスターに顔を向けた。
「あの」
「貴方は」
「ここの大学の学生でして。教育実習を中等部で受けさせてもらってます」
「そうなのですか」
「シスターミカエラさんですよね」
「はい」
シスターは彼の問いに答えた。
「どうしてこちらに」
「中等部で教師を務めておりまして」
彼女は言った。
「教義を。担当しています」
「そうなんですか」
私立の宗教系の学校では必ずと言っていい程その学校の母体の宗教に関して教える授業がある。聖職者である彼女はそれを受け持っているのだ。
「それでこちらにおられたんですね」
「はい。ところで」
シスターはここであることに気付いた。
「貴方は。私のことを御存知なのですか」
「えっ!?」
不意にこう言われて焦りを覚えた。何とか顔には出さないようにしたがそれができているかどうかは甚だ疑問であった。
「といいますと」
「いえ。こちらにおられると今仰いましたから」
シスターは言った。
「大学におられるようですが。そこでお見かけしたのでしょうか」
「ええ、その通りです」
彼は答えた。
「実は。大学の教会でお見かけしまして」
「そうだったのですか」
「こちらにもおられるので。どうしてかと思いまして」
「これでも教師の端くれでもありますので」
にこりと笑ってから述べた。
「こうして生徒を導くのも責務の一つであると考えております」
「偉いですね」
素直にこう思った。口から自然とこの言葉が出た。
「そこまで言えるなんて」
「いえ、私なぞはとても」
だがシスターはその言葉には頬を赤らめ
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