第三章
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第三章
胸は小さく全体的に幼い身体をしている。だが肌は白く雪の様でありその幼い身体も均整が取れている。悪い肢体ではない。
その彼女はベッドの枕元の灯りを頼りにそこにある一つの瓶を取った。そしてそこから液を出してそれを首筋や胸、そして脚にも他の部分にも塗るのだった。
政孝は既にベッドの中にいる。そこで妻がすることを見ていた。
「いつものだね」
「うん。だってあなたこの香水が好きだから」
「好きだからじゃないんだよ」
夫は微笑んで妻のその美しい裸身を見ながら言った。
「好きになったんだよ」
「なったのね」
「そうだよ。それじゃあね」
「ええ、そうね」
「もう塗ったし来てくれるかな」
妻に告げる。
「ここにね」
「ええ、それじゃあ」
その香水を塗り終えた小真は微笑んでだ。そうしてだった。
灯りを消してだ。夫の傍に来た。後は言うまでもなかった。
それが一度終わってからだ。妻はベッドで隣に寝る夫に問うた。彼は小柄な彼女と比べるとだ。三十センチは高く大きかった。
「ねえ」
「ねえ?」
「どうして好きになったの?」
こう夫に問うのだった。彼に寄り添いながら。
「今の私が着けている香水が」
「それはね」
「それは?」
「小真が付けてるからだよ」
だからだというのだった。
「それでなんだよ」
「それでなの」
「最初に会った時にもう付けてたよね」
「そうだったかしら」
「忘れていないよ」
微笑んで妻に言う。
「その時のことはね」
「もう随分と昔のことじゃないかしら」
「昔でも忘れていないよ」
「そうなの」
「だから。忘れる筈がないじゃない」
また妻に対して告げた。
「あの時から変わっていないしね」
「そんな筈ないじゃない」
小真は夫の今の言葉にはすぐにくすりと笑ってみせた。
「あの時お互いに大学生で」
「そうだったね」
「あれから七年よ。もうお互いね」
「二十七になったよね」
「それで変わってない筈ないじゃない」
こう言う妻だった。
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