学園祭
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【 レン視点 】
これだけいろんな事があっても、僕は大学に通っている
正直、何も知らなかった頃の自分が生きてた世界の小ささに驚いている
大学で勉強して、テストを受けて、部活をして、バイトもやって
そんな人生をこれからも送っていくのだろうと思っていた
もちろん、就職はする。4月には内定を決めているのだから
正社員として会社の一部となって、ゆくゆくは課長くらいにはなれたかもしれない
そんな人生。
戻りたいとは思わない
しかし、今の状況がベストだとも思わない
最低ではないが最高でもない
人生は選択の連続だと聞いたことがあるが、どこかで選択を保留にしてしまったような
明確な答えが自分の中に存在しない感覚に陥っている
僕は何がしたいんだろうか
なんかもう考えるのがめんどくさくなってきた・・・
与えられた条件でベストを尽くすのがプロだって誰かが言ってたな
そうだよ、問題なのはどんな選択をしたかじゃないんだ
自分の選んだ道をどれだけ信じて進めるかってことなんじゃないか
たとえそれが、誰かに強制された選択だったとしても・・・・
---
道端の木々が少しづつ色づき始め、ちらほらと冬服を目にする機会が増えてきた
「 今年ももうすぐ冬がくるなぁ 」
大学までの道のりを歩きながら、季節の変わり目を感じている学生がひとり
秋の空は高く、浮かぶ雲は入道雲からいわし雲に変わっている
肺に吸い込まれる空気は、心地よい冷たさで僕の頭を冴えさせる
信号の無い交差点を渡り、歩道を歩く
車が横を通り過ぎるたびに、冷たい空気の波が押し寄せる
歩きながら空を見上げると、カラスが空高く飛んでいる
研究室に到着しドアを開ける。開けるのが僕だけになった扉
・・・僕だけが開く境界
同級生はもういない。あるのは干からびた花束だけ
あの日から一度も花を変えていない。
あの一件以来、先生もこの部屋に来なくなった
聞いたところによると、ショックで精神疾患を患っているらしい
最低限の仕事を済ませたら、早々に帰宅してしまうのだ
そんな話を聞かされると、2人が死んでも平然としている自分が異常に思えてくる
あのときはそんなもんだって割り切ってたけど、今はどうなんだろう
・・・うん、やっぱりなんとも思ってないみたいだ
最近は掃除をしてないせいか、部屋の中はホコリっぽくなっている
座る人がいなくなったイスには特にホコリが目立っている
・・・たまには掃除でもするか
やると決めたらとことんやる
ドアと窓を全開にして、淀んだ空気を入れ替える
ずっと半分だけ閉まっていたカーテンも、久しぶりに隅に寄せて束ねる
部屋の中の空気が澄んでいく
開け放たれた窓から、いつもよりずい
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