第四楽章 心の所有権
4-4小節
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ール、それにシェリーと交流があって、しばらくは二人ともとても落ち込んでたわね。ジェームズは最期までご両親と友人である二人を案じていた。自分が死ぬという間際で。何と優しい男でしょう。伝えに行ったご両親も泣いてらっしゃいました……
「補佐、いいですか」
Cチームのベンジャミンだった。――いけない。回想に心奪われてる場合じゃないわよ、わたくし。
「何です?」
「何人かで同時に斬りかかった時があったでしょう? あれでセドの奴、『ユリウス室長に剣を向けてしまった』って変にハイになってるんですよ」
ベンジャミンに付いて隣の部屋へ。
入ると、隅っこで毛布を被る青毛の若者を発見。行って、顔を覗き込んで、声をかけてあげる。
「セドリック」
「ジゼル、補佐。お、れ」
「Eチームは滅多に前室長と接する機会がなかったものね。緊張しました?」
「は、い。すい、ません」
「いいのよ。クラウン相手に恐れるなとは、わたくしだって言えないわ。ねえ、テレーゼ」
近くにいたEチームの女子――セドリックの姉テレーゼは相槌を打ってくれた。無愛想だけれど根は弟想いなのよね、テレーゼってば。こうしてセドリックに付かず離れずの距離にいるのが証拠。
「失礼します。補佐、よろしいですか」
あらあら、シェリー。忙しないわね。こっちへ来たと思ったら今度はあっち。
シェリーはこちらの部屋に入って後ろ手にドアを閉めた。
はいはい、今度はなあに?
「ヴェル秘書官の指示だといって前室長の弟さんが来たんです。解析データを持ってくるように言われたって。本当でした」
「そう…でしたら、そのようにお願いします。それと、わたくしがいたことと、わたくしがユリウス前室長と戦ったことは、ルドガー様には言わないでおいて」
懐からFDを取り出してシェリーに渡した。シェリーが部屋を出て行く。ドア越しに聴こえてくるシェリーの声で、FDがルドガー君に渡るのが聴こえた。
窓枠に歩み寄って、ガラス窓に頭を預ける。外は曇りの空。せっかくのリーゼ・マクシアなのに。まるでわたくしたちの未来を暗示してるみたい。
でも、いい。暗い今なら、これ以上暗くはならない。
これから迎える明日に未来に、わたくしたちが明るくしていけるってことですもの。
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