十二幕 これからはずっと一緒だよ
5幕
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で己を宥めすかしているのだ。ジュードたちには悟られないように。本当はエル一人を救う願いを告げたかった己を黙殺して。
「フェイ」
呼ぶと、フェイは素直にルドガーの下へ歩いて来た。ルドガーはフェイにエルを支える役を任せた。
フェイは全て知っているかのように、彼女の小さな姉の肩を抱いて共に下がった。
『エルのことは、いいんだね?』
空いた両手に二つの懐中時計を出す。
ルドガーにとっての「たった一人」を救うための、ただ一つの方法を実行するために。
「エルは俺が助ける」
エルを助ける方法、エルの因子化を解く方法は――別の骸殻能力者がエルより先に時歪の因子となり、因子定数をカンストさせてしまうこと。ルドガーが完全に因子化すれば、進行中の因子化は解け、全ての骸殻能力者の体は――エルの体は治る。
共に生きたいとエルに告げた。今でもその気持ちに嘘はない。
ただルドガーは、エルが消えるのが我慢ならない。
たったそれだけの、どうしても譲れない想いから、己の犠牲を決意した。
いざ、変身しようとした時だった。
構えた銀と真鍮の時計が、両手から消え失せた。
「え!?」
ふり返り、辺りを、仲間たちを見回す。
二つの懐中時計は、両方がフェイの手の中にあった。
「いつのまにっ……何する気だ!」
姉妹して、瞳に宿るのは、たった今のルドガーの決意と同じもの。
(まずい、まずい、まずい!)
「ここで骸殻を使ったら、ルドガーが時歪の因子化しちゃう。だから」
フェイの両手の中で懐中時計が――熔けた。
「もう使わせない。ルドガーにはお姉ちゃんを救わせない」
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