第一章
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第一章
ブル−ジーンズメモリー
話を聞いたのは突然だった。
俺はその話を聞いてだ。話してきたツレに問うた。
「それマジか!?」
「あ、ああ」
ツレは俺に掴まれて揺れながら答えた。勿論揺らしているのは俺だ。
「そうだよ。その通りだよ」
「あいつが何でだ?」
「何でも夢があるらしいんだ」
「夢!?」
「東京に出てな」
俺達は湘南にいる。生まれも育ちもここだ。ここでずっと生きていくつもりだった。しかしだった。
あいつはこの湘南を出て東京に出る。それを聞いて俺は我を失った。
それで取り乱してだ。ツレを問い詰めた。
「夢って何なんだよ」
「何かな」
「ああ、何か?」
「向こうで店を出したいらしいんだよ」
「そんなのこっちでもできるだろうがよ」
「それでも東京で働きたいらしいんだよ」
ツレはこう話すのだった。
「それでなんだよ」
「何だよ、それ」
俺は思わずこう言ってしまった。
「訳がわからねえよ」
「しかし本当のことだぜ」
「マジか」
「ああ、マジだ」
ツレはまた俺に答えてくれた。
「そうらしいな」
「糞っ、本当に急だな」
「けれどな」
ここでだった。ツレは俺に問うてきた。問う方と問われる方が逆になった。
「何でなんだよ」
「何でだって?」
「御前やけに焦ってるな」
その我をなくした俺への言葉だった。
「それは何でなんだよ」
「あっ、いや」
言われてだ。俺はやっと気付いた。今の自分自身にだ。
それで取り繕うとする。しかしだった。
「まさかと思うけれどな」
「いや、何でもない」
「聞かないぜ」
ツレは笑ってこう言ってくれた。
「しかしな」
「ああ」
「後悔はするなよ」
こうも言ってくれた。
「絶対にな」
「後悔は、か」
「後悔ってのは辛いものだからな」
後悔ってやつは生きていれば絶対にあるものだ。しかしそれはだ。中々消えなくて残っていて。何かあれば責めてくるものだ。
俺はその後悔ってやつが嫌いだ。一番嫌いだ。それを言われてだった。
「それじゃあな」
「決めたか」
「ああ、決めた」
こうツレに返した。
「それであいつは何時東京に経つんだ?」
「明日だ」
「おい、早いな」
「だから急にその行く日が決まったんだよ」
ツレは俺にこのことも話してきた。
「本当にな」
「わかった。それじゃあな」
「どうする?それで」
「行くに決まってるだろ」
答えはだ。もう決まっていた。
「今からな」
「よし、それじゃあな」
「行ってそれであいつと会って来る」
俺はツレにも答えた。
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