第十三章
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第十三章
夜の校庭の中央にそのキャンプファイアーが燃えている。二人は多くのカップルがそうであるように二人でその前に来てだ。そうしてゆっくりと踊りはじめた。
それを見た学園の一同は。それぞれ言うのだった。
「えっ、奈良橋!?」
「そうよね」
「前川と一緒に」
「踊ってるけれど」
このことを言うのだった。
「何であの二人が?」
「どういう組み合わせ?これって」
「どうして今二人で」
「ああ、それはね」
ここで女生徒の一人がいぶかしむ彼等に説明した。
「あの二人同じクラスでね」
「同じクラスだったの」
「へえ」
それを知らない者も多かった。自分達のクラス以外のことには案外疎いのが人間というものである。それは彼等も同じだったのである。
「それでなんだ」
「二人が」
「しかもね」
言葉はさらに付け加えられた。
「同じ文化祭の委員だったんだ」
「文化祭の」
「ああ、それでなの」
「それで二人でなの」
これで一同の頭の中で事実がつながった。完全にである。
そのうえで踊っている二人を見るのだった。大輔は妙を静かにリードしていた。彼女はその彼の周りで穏やかだが確かに舞っていた。
その美しい容姿もあって。彼女は皆の注目を浴びていた。
「うわ、何か」
「前川が羨ましいっていうか」
「奇麗よね」
「そうよね」
皆で話すのだった。
「何か動きも明るいし」
「確かに」
二人を見ながらの言葉だった。二人は皆の注目を浴びていた。
しかし今の妙にはそれは目に入らなかった。そうしてその顔は。
見れば笑っていた。微笑みである。大輔と共に踊りながらそのうえで微笑んでいた。
「笑ってるね」
「えっ・・・・・・・」
「笑ってるじゃない」
そうしていると告げた。彼女に対して。
「今ね」
「笑ってますか」
「うん、笑ってるよ」
大輔もまた微笑んでみせた。そうしてまた妙に告げた。
「今確かにね」
「そうですか。笑ってますか」
「うん、とてもいい笑顔だよ」
妙に聞こえるようにはっきりと告げた言葉だった。
「自然に笑えたんだね」
「私が自然に」
「今まで何があったのかは知らないよ」
大輔も彼女の過去に何があったのかはおおよそ察しがついていた。実行委員にはじめてなった時に皆から責められたことと人を恐れるその様子を見てだ。わかっていたのだ。
「けれどね」
「けれど」
「それでも過去は過去だよ」
「過去は、ですか」
「そうだよ。過去なんだよ」
それに過ぎないというのである。
「結局のところはね」
「じゃあ私は」
「そうだよ、もう笑えるんだよ」
踊りながら自分に問うてきた彼女への言葉である。
「自然にね」
「私が。自然に」
「笑っていいんだよ」
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