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不器用に笑わないで
第十一章
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第十一章

 特に女の子達は怖がった。泣き出す子さえいた。化け猫が包丁を持って後ろから襲い掛かり天井から逆さ男がいきなり顔を出す。流石にこれは怖かった。
「怖過ぎるぞおい!」
「何だよこれ!」 
 男連中ですらであった。怯えることしきりだった。とにかく規格外に恐ろしかった。そして最後の最後に待っているその幽霊が。
「うらめしや〜〜〜〜」
 目は白くなり笑ったようになっている。そしてそこには光がない。
 おまけにである。誰が何を考えて渡したかわからないが彼女は鋸まで持っていた。しかもその鋸にはべっとりと血糊まで付いていた。
 それを持ってである。ゆらゆらと揺れながらやって来て。最後で客達に言うのだ。
「死んじゃえ」
 こう言って近付く幽霊に皆出口まで追いやられる。彼等は最後の最後で極めつけの恐怖を味わって出ることになったのである。
 店の評判は最高であった。そのあまりもの怖さにだ。
「特に最後の幽霊がな」
「ああ、あれね」
「あれが特に怖くて」
「夢に出そう」
 妙がなまじ美人なだけに余計にであった。怖かったのである。効果はテキメンであった。まさに本物が出て来た様にである。そこまでだ。
 それで皆怖いもの見たさで集まった。その中にはリピーターもいた。特に人気があったのはやはり彼女であった。妙のことが瞬く間に広まった。
 そしてである。何度も何度も彼女に追いかけられる。その恐ろしさだけが噂になるわけではなかった。ただ怖いだけでそこまではならなかった。
 やはり美人だからだ。彼女の美貌がさらにそれを際立たせているのだった。
 そうしてであった。店は当然の結果として繁盛した。大輔も大忙しであった。
「おい、もう俺一人じゃよ」
「難しいか?」
「そっち持たないか?」
「ああ、持たない」
 携帯で店の奥で作業をしている面々に連絡するのだ。
「とてもじゃないが一人じゃな」
「じゃあ誰がいいんだ?」
「奈良橋以外ならいかせられるぜ」
「奈良橋以外かよ」
「あいつが看板だからな」
「だから無理だ」
 こう連絡が来た。
「他の奴でいいな」
「一人行かせるからな」
「本当はあいつに来て欲しいんだけれどな」
 こんなことも言う彼だった。
「実際な」
「何でだよ」
「それは」
「いや、客が言うんだよ」
 電話をしているその間も受け付けの仕事をしている。話をしているその側から客が次から次にやって来てそれの応対をしなくてはいけないのである。
「あいつが凄い奇麗だってな」
「ああ、奇麗だぜ」
「それはな」
 このことは電話の向こうのクラスメイト達が保障した。
「凄みのある美人っていうかな」
「そんな感じだな」
「じゃあ見たいんだけれどな」
 これが彼の本音だった。
「その奈良橋な」

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